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平成14年度以降の同和行政のあり方についての意見具申

[2011年1月12日]

平成14年度以後の同和行政のあり方についての意見具申

                     平成13年12月18日

八尾市長  柴谷 光謹(しばたに みつなり)様

                     八尾市同和対策協議会

                     会長  山 本  登

 

 平成14年度以後の同和行政のあり方についての意見具申


 本協議会は、平成12年6月第40回総会において、市長から「平成14年度以後の同和行政のあり方についての検討依頼」を受け、小委員会等を設置して、平成12年度に実施された「同和問題の解決に向けた実態等調査」結果や大阪府の動向も踏まえながら、慎重に審議を続けてきた。この程、第42回総会において結論を得るに至ったので、別紙のとおり意見具申する。

 市におかれては、本意見具申を尊重し、同和問題が早期に解決されるよう、より一層の努力を払われたい。

第1 はじめに - これまでの同和行政の経緯

1 国の同和行政の経緯

 戦後、我が国における新憲法の下での同和問題の解決に向けた新しい取組みは、1953(昭和28)年度の隣保館設置の補助事業に始まり、1960(昭和35)年度からはモデル地区において総合事業が開始された。

 1965(昭和40)年8月、国の「同和対策審議会」は「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本的方策」についての答申(以下、「国の同対審答申」という。)を政府に提出したが、同答申は「同和問題の解決は国の責務であると同時に国民的課題である」との基本認識を明確にし、国の積極的な対応を促すなど、歴史的意義は極めて大きく今日までの同和施策を基礎づけた。

 そして、国の同対審答申に基づいて1969(昭和44)年7月に「同和対策事業特別措置法(以下、「同対法」という。)」が10年間の時限法として制定・施行され、1979(昭和54)年に3年間延長された。その後1982(昭和57)年に同対法の期限切れを迎え「地域改善対策特別措置法(以下、「地対法」という。)」が、5年の時限法として制定・施行され、1987(昭和62)年には、地対法の期限切れを受けて「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下、「地対財特法」という。)」が制定・施行された。

 この地対財特法制定の趣旨は「特別対策は永続的に行われるべき性格のものではなく、事業の円滑な実施によってできるだけ早期に目的を達成する」ことであったことから、1996(平成8)年度末をもって効力を失うこととなっていたが、1996(平成8)年5月に地域改善対策協議会の意見具申(以下、「地対協意見具申」という。)が出され、地対財特法の期限後の方策に関し、「国同対審答申は、部落差別が現存するかぎり同和行政は積極的に推進されなければならないと指摘しており、特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が、同和問題の早期解決をめざす取組みの放棄を意味するものではない」旨の意見が示された。こうした提言に基づき、国においては、「一般対策」への円滑な移行を前提に、15の「特別対策」について、経過措置として2001(平成13)年度末まで5年間期限を延長する旨の改正が行われ現在に至っている。そのため、2001(平成13)年度末に地対財特法は失効し、財政法上の特別措置による「同和対策事業」は、終焉を迎える。

 また、「差別意識の解消に向けた教育・啓発は、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育・啓発として発展的に再構築すべき」であり、「人権侵害による被害の救済等の対応を充実強化すべき」との地対協意見具申の提言を踏まえ、「人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務を明らかにするとともに、必要な体制を整備し、もって人権の擁護に資することを目的」とする「人権擁護施策推進法」が制定され、この法律に基づき1997(平成9)年5月に人権擁護推進審議会が設置された。

 さらに、1994(平成6)年12月の国連総会において、1995(平成7)年から2004(平成16)年までの10年間を「人権教育のための国連10年」とすることが決議されたことを受け、1995(平成7)年12月内閣に人権教育のための国連10年推進本部が設置され、1997(平成9)年7月に「人権教育のための国連10年に関する国内行動計画」が定められた。

 そして、人権擁護推進審議会より1999(平成11)年7月に「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」の答申が提出され、これに基づき、2000(平成12)年12月「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定・施行された。また、本年5月には、「人権救済制度の在り方について」の答申が提出され、国において人権救済機関の整備等その具体化に向けた検討が進められている。

 また、1999(平成11)年6月には、「男女共同参画社会基本法」が、2000(平成12)年11月には、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)、「児童の虐待の防止等に関する法律」、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が、2001(平成13)年4月には、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)など人権に関する法律が次々に制定されてきた。

2 大阪府の同和行政の経緯

 大阪府においては1947(昭和22)年から、同和対策として、共同作業所の整備を行う地区環境改善事業などの取組みが行なわれてきた。

 1969(昭和44)年10月には、「大阪府下の同和問題解決のため、府として如何なる施策をとるべきか」の諮問に対する大阪府同和対策審議会(以下、「府の同対審」という。)の答申が提出され、生活環境改善・福祉保健・産業職業・教育の各部門に分けて、同和問題解決のために積極的な努力を図るべきとの提言が行なわれた。その後も数次に及ぶ答申が提出され、その答申の趣旨を踏まえ、府では積極的な事業展開が図られてきた。

 1998(平成10)年10月には、人権尊重の重要性を明確に示し府における今後の人権施策推進の枠組みを定めた「大阪府人権尊重の社会づくり条例」が制定された。そして同条例に基づいて、2001(平成13)年3月に、同和問題の解決をはじめとするさまざまな人権問題に取組んでいくため、人権意識の高揚を図るための施策や人権擁護に資する施策を進めていくことを目的とした「大阪府人権施策推進基本方針」(以下、「府人権施策基本方針」という。)が策定された。

 1997(平成9)年3月には、「人権教育のための国連10年大阪府行動計画」が策定され、2001(平成13)年3月には、同計画がより実践的なものとなるよう見直しが行なわれ、「府人権施策基本方針」の人権意識の高揚を図る施策を具体化するための計画として位置づけられた「後期行動計画」が策定された。

 そして、2001(平成13)年9月には府の同対審より「大阪府における今後の同和行政のあり方について」の答申が提出された。

3 八尾市の同和行政の経緯

 八尾市においては、1961(昭和36)年に同和事業に関する基本的問題を審議する「八尾市同和地区改善協議会」が設置され、同年、西郡地区では改良住宅の建設が開始され、安中地区でも1966(昭和41)年に公営住宅の建設が着手された。

 また、1963(昭和38)年西郡地区に、大阪府下で最初の本格的隣保館が設置され、1967(昭和42)年には安中地区にも設置され、その後1973(昭和48)年に隣保館は解放会館と名称が変更された。

 教育関係では、1963(昭和38)年に「同和教育の基本方針」が策定され、1967(昭和42)年には同基本方針が全面改正され「八尾市同和教育基本方針」として制定された。1964(昭和39)年3月には「同和教育の推進を要望する決議」が市議会において採択された。

 1965(昭和40)年には、国の同対審答申をうけて市議会も同年12月「同和対策審議会答申の完全実施を政府に要望する決議」を採択した。

 1969(昭和44)年7月には、同対法が10年間の時限法として制定・施行されたが、八尾市では、それに先立って1967(昭和42)年5月、同和対策を推進する組織として「同和対策室」を設置し、さらに同年6月には、教育委員会事務局に「同和教育指導室」を設置し、長期計画の策定と実施にあたる同和行政の推進体制とされた。

 また、同年12月には、八尾市同和地区改善協議会が「八尾市同和対策審議会」(以下、「市の同対審」という。)に改組された。1968(昭和43)年8月、市の同対審は、市長から「八尾市は、同和問題を解決するため、如何なる総合的、具体的施策を樹立し、推進すべきか」という諮問を受け、1969(昭和44)年9月、「八尾市同和地区解放計画構想の方向」についての中間答申を提出し、同和問題を解決するための長期計画構想の方向を示すとともに、事業実施の根本的前提となる諸問題を明らかにした。さらに、1970(昭和45)年4月には、同和問題解決のため長期総合実施計画を策定し、その即時実施体制の確立を要望する最終答申(以下、「市の同対審答申」という。)を提出した。これを受けて市では1971(昭和46)年に長期総合実施計画を策定した。

 市の同対審は1977(昭和52)年12月に廃止され、新たに「八尾市同和対策協議会」(以下、「本協議会」という。)が設置され、1979(昭和54)年3月に「環境改善計画の方向」についての「中間提言(1)」、1982(昭和57)年3月には「個人給付事業の方向」についての「中間提言(2)」等、十数度にわたる意見具申等を行った。

 1996(平成8)年12月には、地対財特法の法期限を迎えることから、法期限後の同和行政のあり方の指針として「平成9年度以後の同和行政のあり方について」の意見具申を行ったが、法が5年間延長されることになったため、改めて法期限後の施策のあり方について検討する必要が生じた。そのため、2000(平成12)年6月に「平成14年度以後の同和行政のあり方について」市長から意見具申の依頼が行なわれた。

 なお、1997(平成9)年7月に市長を本部長とする「八尾市人権教育のための国連10年推進本部」が設置され、1999(平成11)年2月には「八尾市人権教育のための国連10年行動計画」が策定され、その推進が図られてきた。また、2001(平成13)年3月には人権施策の総合的な推進を図るため「八尾市人権尊重の社会づくり条例」(以下「八尾市人権条例」という。)が制定され、同条例に基づき同年10月に「八尾市人権尊重の社会づくり審議会」が設置された。

第2 同和問題解決のための施策の基本方向

1 同和問題についての基本認識

 1996(平成8)年地対協意見具申では、「同和問題は、憲法が保障する基本的人権の侵害に係る深刻かつ重大な問題」であり、「同和問題は多くの人々の努力によって、解決へ向けて進んでいるものの、残念ながら依然として我が国における重要な課題」であるとし、「国の同対審答申は、同和問題の解決は国の責務であると同時に国民的課題であると指摘している。その精神を踏まえて、今後とも、国や地方公共団体はもとより、国民の一人一人が同和問題の解決に向けて主体的に努力していかなければならない。そのためには、基本的人権を保障された国民一人一人が、自分自身の課題として、同和問題を人権問題という本質からとらえ、解決に向けて努力する必要がある。」との認識の下で、「部落差別が現存するかぎり、この行政は積極的に推進されなければならない」と指摘している。

 同和問題の解決は、「すべての人びとの人間性がそこなわれることなく、お互いの個性を認め合い、人権を擁護し、互いに他者を思いやり支えあう、人権が尊重され、共生の心があふれる人間都市」という「八尾市総合計画(やお未来・元気プラン21)」(以下「八尾市総合計画」という。)の基本理念を具現化するものに他ならない。従って、部落差別が現存するかぎりその解決に向けた施策を積極的に推進することが必要であり、その際には、同和問題解決のための取組みを人権問題という本質からとらえ、八尾市人権条例の目的である「すべての人の人権が尊重される社会」の実現をめざして進めていく必要がある。

2 「同和問題の解決に向けた実態等調査」からみた現状と課題

 2000(平成12)年度に同和問題の解決に資することを目的として、同和地区における生活実態や課題及び人権意識の状況を把握し、差別を生み出している原因等を調査するため「同和問題の解決に向けた実態等調査」(以下、「実態等調査」という。)が実施された。

(1) 生活実態調査からみた現状と課題

 市内同和地区を対象に実施された「生活実態調査」により明らかになった現状と課題の概要は次のとおりである。
  1. 同和地区では、高齢者の単身世帯や高齢夫婦世帯、母子・父子世帯、及び外国籍住民の割合が高くなっている。また、若年層が同和地区から流出し、高齢者世帯、母子世帯、障がい者や低所得層などの課題を有する人びとの地区外からの転入者の比率が高くなっている。なお、現住地区出身の住民は、西郡地区で49.3%、安中地区で24.0%となっている。

  2. 不就学や初等教育修了者の割合が少なくなり、中等教育修了者や高等教育修了者の割合が増加し、高学歴化の進行がみられる。しかし、大学進学率は、一般地域となお相当の開きがあり、また、高校以上では中退者の割合が高く、中退問題はなお重要な教育課題となっている。また、最終学歴が中退である人のうち再学習への期待を有する人は3割以上に及び、これら再学習意欲の期待に応えるため、生涯学習などの学習機会の提供が求められている。

  3. 同和対策事業の奨学金がなかった場合、高校生や短大・大学生の子どもをもつ制度利用者の6割以上の親が進路へ何らかの影響があったとしており、特に年収が低中所得階層の場合には、進学に対する抑止力が比較的強く働く傾向がみられる。同制度が廃止されるだけであれば進学率の低下を招き、格差が再び拡大するおそれがある。経済的理由により進学を断念することのないよう、日本育英会、大阪府育英会などさまざまな一般の奨学金制度の積極的活用を図るための取組みが必要である。

  4. 同和地区のパソコンの普及率は、全国と比べ大きな格差がみられ、インターネットの利用率においても、全国平均の半分に止まっている。これは、同和地区の学歴構成、収入、高齢化等との関連性が高い。高度情報化社会においては、パソコンやインターネットの知識や情報活用能力の格差の結果、再び社会的、経済的格差の拡大につながる恐れがあり、誰もが情報化社会の利益を享受できるような対策が課題である。

  5. 介護保険については、実態等調査の実施時期が制度発足後1か月余りの時点であったことを考慮する必要があるが、制度が複雑でわかりにくいという意見が多い。また、現在の介護者や希望する介護形態から、依然として家族介護への依存が高い比率を占める傾向がみられる。介護保険制度の一層きめ細かな周知や、これらのサービスが十分活用されるような相談や指導などが必要である。

  6. 保健・福祉サービスを受ける際に困ったことは、「どこに相談していいのか分からなかった」が最も多く、「何をしてくれるのかわからなかった」「どこまで応援してくれるのかわからなかった」が次いで多くなっている。これは、保健・福祉サービスが利用者の選択による自立支援型に転換しつつある中で、一律的な個人給付等の福祉対策になじんできた同和地区出身者にとまどいが生じていることがうかがわれ、サービスの周知・徹底や総合的な相談活動の充実などが必要である。

  7. 失業率は、男女とも八尾市平均を上回っており、とりわけ若年層の失業率が非常に高く、40歳代の男性の失業率は八尾市平均の2倍前後となっている。さらに、勤続期間が短い者及び従業員規模の少ないところで働く者の率が高い。
     1990(平成2)年の調査では、雇用形態における常雇の割合や給与形態における月給の割合は、年齢が若いほどその割合は高く、就労の安定化傾向がみられたが、今回の調査ではこのような傾向はみられなくなっている。
     また、母子世帯は「就職あっせん」へのニーズが高いなど、就職困難層の雇用・就労への支援が課題となっている。

  8. 公営・改良住宅においては、最低居住水準を満たしていない割合が西郡地区13.1%、安中地区2.0%となっており、地区の住宅全体でみた場合は、西郡地区13.9%、安中地区5.8%となっている。また、同和地区の公営・改良住宅は1960年代に建設された住宅が多く、今後、改修や建替えが課題となってくる。さらに公営・改良住宅では、高齢者世帯や障がい者のいる世帯の占める割合が高く、住宅におけるバリアフリー対応が急がれる。
     また、住み替え希望者の住宅志向は多様化してきており、さらに同和地区外への転出希望が、若年層、高学歴層や所得の高い層に多くみられることから、定住魅力ある「まちづくり」が課題となっている。

(2) 意識調査からみた現状と課題

 大阪府下同和地区住民を対象に実施された「同和地区内意識調査」及び大阪府民全体を対象にした「府民意識調査」により明らかになった同和地区出身者及び府民の意識に関する現状と課題の概要は次のとおりである。

  1. 8割を超える大阪府民が「被差別部落」、「同和地区」あるいは「部落」と呼ばれる差別を受けている地区があることを認識しており、「同和地区出身者」との判断は、府民も地区内居住者も「現在同和地区に住んでいる」ことを理由とする者が最も多い。また、約4割の府民が家を購入する際やマンションを借りる際に同和地区を避けるとしている。
     そして、同和地区出身者は、就職に際して不利になると考える府民は6割以上、結婚に際して反対されることがあると考える府民は約8割に達している。

  2. 同和地区内外の結婚は世代が若くなるほど、その率は増加している。しかし、同和地区内外の結婚に際し被差別体験を有する夫婦が約2割存在し、また、自分が同和地区出身者と自認している人のうち2割に結婚破談経験があり、そのうちの3割は同和問題が関係したと思うとしている。さらに、同和地区出身者が最も印象に残っている被差別体験に出会った場としても「結婚のことで」が最も多い。
     そして、約2割の府民が、結婚にあたって相手が同和地区出身者かどうかが気になるとしており、同和問題が市民の結婚観に影響を与えている。

  3. 差別の原因については、「同和地区だけに特別対策を行うから」や「同和地区に対する偏見が強く、市民の人権意識が低いから」をあげる人が多い。その一方、約7割の府民がこうした差別を近い将来なくすことができると考えており、そのために重要なこととして「同和地区と周辺地域の人々が交流を深め、共同して『まちづくり』を進める」ことや「学校教育・社会教育を通じて、差別意識をなくし、人権を大切にする教育・啓発活動を積極的に行う」ことなどをあげている。
 以上のように、実態等調査によれば、進学率・中退問題などの教育の課題、失業率の高さや不安定就労などの労働の課題などが残され、新たに高度情報化社会の到来により、情報活用能力の格差によって再び社会的、経済的格差につながる恐れもある。さらに、依然として差別意識が解消されていない問題が残るとともに、部落差別事象も跡を絶たず、未だ同和問題が解決されたとはいえない状況にある。

 一方、両地区とも住民の転出入が多く、人口の流動化、特に若年層が転出し、低所得層、母子世帯、障がい者など、さまざまな課題を有する人びとが同和地区に来住してきている。この結果、同和地区自体も変化、多様化し、これまでの同和地区のさまざまな課題は、同和地区固有の課題としてとらえることが可能であったが、現在の同和地区に現れている課題は、現代社会が抱えるさまざまな課題と共通しており、それらが同和地区に集中的に現れているとみることができる。このため、これらの諸課題に対するより総合的・効果的な施策の取組みが重要である。

 また、意識調査結果によれば、同和地区内外住民の交流促進や「コミュニティづくり」などに取組むとともに、同和問題に関するより効果的な教育・啓発や、市民の人権意識の高揚を図るための取組みが重要である。そのためには、市民が同和問題を正しく理解し認識を深め、それが態度や行動に結びつくよう、その手法・内容に工夫をこらす必要がある。また、差別の厳しさを強調するだけではなく、同和問題が解決可能な問題であるという具体的な展望を示すことも必要である。

3 同和問題解決のための基本目標

 今後の同和問題解決のための施策の基本目標は、部落差別を解消し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざし、同和地区内外の住民が一体となって協力しながらコミュニティの形成を図ることである。また、同和地区出身者と行政との信頼性を高めていくための努力も必要である。

 そのためには、

  1. 同和地区出身者の自立と自己実現を支援するための当事者の立場に立った相談活動を含めた諸条件の整備
  2. 市民の人権意識の高揚を図るための諸条件の整備
  3. 同和地区内外の住民の交流を促進するため、地区施設活用等の諸条件の整備

 が必要である。

第3 同和問題解決のための施策の推進方向

 国際的な人権尊重の潮流の中にあって、八尾市総合計画においては「多様な価値観や存在を認め合い」、「一人ひとりの人権を尊重し、お互いを認め合い、風通しのよい開かれたまちをめざし」、「市民と行政が一体となって社会的身分、人種、民族、信条、年齢、性別、障害のあることなどによる差別のない、お互いの人権が尊重され、ともに認めあえる社会を築くことに努める」こととされている。

 また、八尾市では、「八尾市人権教育のための国連10年行動計画」を策定するとともに、「八尾市人権条例」を制定し、市民とともに、すべての人の人権が尊重される社会をめざして、人権に関する施策の総合的な推進を図ることとされている。

 このようなことから、今後の同和問題の解決に向けた取組みを、財政状況を考慮しながら、これまでの成果を損なうことなく、女性、高齢者、障がい者、外国人などのさまざまな人権問題と関連させ、人権尊重の視点に立って、市民全体の福祉と人権保障の大きな枠組みの中に位置付けていかねばならない。

1 特別措置としての同和対策事業の終了

 同和問題解決のための取組みは、これまでは一般施策の補完として特別措置がなされてきたが、本来は一般施策で実施されるべきものであり、地区の環境改善や同和地区出身者の生活向上が緊急の課題であったこと、こうした課題に一般施策が同和地区の実態に十分対応できなかったことなどにより、特別措置がなされてきた。

 このため八尾市では、同対法や地対財特法などの法律及び国の地対協意見具申や府の同対審答申並びに本協議会の意見具申等に基づき、同和問題の解決を市政の重要な課題として位置づけ、その早期解決に向けた諸施策が実施されてきた。そして、生活環境の改善をはじめとする「格差是正」に重点を置いて事業を実施してきた結果、同和地区の環境改善や住民の生活向上等の実態的差別は改善され、一般地域との格差はほぼ解消されてきた。

 個人給付的事業については、その目的を達したものから順次見直しが行われ、廃止や一般施策に移行し、また、住宅家賃の見直しも行なわれてきた。

 その結果、1996(平成8)年地対協意見具申が「特別対策は、事業の実施の緊要性等に応じて講じられるものであり、状況が整えばできる限り早期に一般対策へ移行することになる。」と述べているように、今後は地区の状況などを的確に把握し、一般施策を有効かつ適切に活用することを基本とすべきであり、2002(平成14)年3月末の現行法期限後の同和問題解決のための施策の進め方については、同和地区、同和地区出身者に対象を限定した個人給付的事業その他のすべての特別措置としての同和対策事業は終了すべきである。

 しかし、特別措置の終了及び一般施策への移行は、実態等調査で示された同和地区における課題の解決をめざす取組みの放棄を意味するものではなく、一般施策を活用して同和問題の解決に向けた施策を実施していくことである。その際、これまでの成果を損なうことのないよう十分に配慮することはもちろんのこと、これまで培ってきた事業のノウハウを一般施策に活かしていくことが重要である。

 なお、法期限切れを迎えることから、特別措置法に基く同和対策事業実施のための「地区指定」はなくなる。

 これからは、同和地区、同和地区出身者に対象を限定するのではなく、さまざまな課題を有する人びとの自助・自立を支援し、誰もが自らの個性や能力を活かした自己実現が図れるよう、人権行政の一環としての同和問題の解決に向けた施策として取組んでいくべきである。

 なお、物的事業に関しては市の同対審答申を踏まえた長期計画に基づき、国や府の財政措置も得ながら住宅、道路、下水道、公園等の事業を積極的に推進し、この結果、地区の生活環境は大きく改善され、ほぼ完了するに至っているが、一部の用地買収の難航等により残った事業については、一般施策として実施すべきであり、その際、国制度の補助採択等により事業が円滑に実施できるよう国、府に積極的に働きかける必要がある。

2 自立と自己実現を支援するための取組み

 同和地区出身者の自立と自己実現を図っていくための個別の取組みについては、「平成9年度以後の同和行政のあり方についての意見具申」で既に示したとおりであるが、今回の実態等調査の結果を踏まえ、次のような取組みが特に求められる。

  1. 教育対策は、自立の向上、就労の安定等に重要な役割を果たす施策である。今後の教育の役割として、児童・生徒が多様な進路選択ができ、就労への意欲の喚起や機会の拡大を図るため、地域の児童・生徒の学力向上を図り、中途退学者の防止等のため、学校教育における進路指導等の充実や、保護者等への学習機会の提供、交流の場の充実を図り、教育機関、家庭及び地域の保護者組織やPTA等それぞれの役割を明確にした具体的取組みがなされるべきである。

     今後は、これまでの同和教育で積み上げてきた成果を踏まえ、すべての人の人権が尊重される社会の実現のため、同和問題をはじめとするさまざまな人権問題の解決をめざす観点に立った人権教育の積極的な推進が求められる。

     なお、同和対策事業としての奨学金制度の廃止が予定されているが、この制度は同和地区出身者の学歴構成の格差是正、ひいてはその自立に大きく貢献してきた。2002(平成14)年度以降においては、日本育英会や大阪府育英会などの各種奨学金制度の積極的な活用を図るため、一般施策の奨学金制度の内容や手続について周知徹底を図るとともに、これらの制度を有効に活用出来るような仕組みづくりが必要である。

  2. 近年の情報化の急激な進行にともない、情報格差が生じないよう、情報機器利用に関わる学習機会の提供等が必要となっている。

  3. 地域福祉については、高齢者、障がい者、母子・父子世帯、低所得層などの人びとの健康で文化的な生活を保障するとともに、これらの人々が自立意識を醸成し、生きがいをもって生活できるよう、自立支援の視点に立った、さまざまな福祉サービスの充実や情報提供が求められている。
     
     なお、共同浴場については、大阪府及び大阪府市長会等による「公共浴場のあり方研究会」の検討結果に基づき、地域のニーズ、入浴機能の確保、共同浴場の経営実態について十分把握し、地区住民はもとより地域社会全体の理解と協力の得られる方向を検討すべきである。また、地区診療所については、自立的運営に向け、効率的な事業実施が求められる。
     
  4. 就労については、同和地区では高い失業率や、給与形態、勤務先の従業員規模、勤続期間などに不安定状態がみられることから、同和地区出身者の生活基盤を安定させ自立を支援する上での重要な課題である。

     今後は、さまざまな課題を有しているために就職が困難な人びとを対象に、就労の安定をめざし、職業相談や職業訓練機関等の有効活用など国・府の職業安定機関等と連携し、これらの就労困難層に対する多様な働き方に対する支援が必要である。

  5. 地域のまちづくりについては、若年層の同和地区外への転出や同和地区居住者の高齢化などにより、活力低下が懸念されており、今後は、高齢者や障がい者、子どもたち等が安心して住むことができ、住民が住むことに誇りをもち、住み続けたいと願う定住魅力あるまちづくりを推進すべきである。

     なおその際、八尾市総合計画にある新しいまちづくりのしくみである地域経営システムの考え方に基づき、多様なまちづくりの取組みと連携を図りながら、住民自らが主体となって、地域のさまざまな課題の共有化や情報交換・対話を行う場としての「まちづくりラウンドテーブル」の活用が求められる。

     また、まちづくりを進めるにあたりさまざまなニーズに対応した多様な住宅供給の促進を図っていくことが求められている。

     公営・改良住宅については、良好な維持管理、浴室等の設備やバリアフリー化などの住戸改善、老朽化に伴う建替えなど、既存の公営・改良住宅のストックを総合的に活用していく必要があり、「市営住宅ストック総合活用計画」を策定し、建替えを含む機能更新計画に基づき推進する必要がある。今後は、地域のまちづくりの観点から入居・管理体制のあり方や活用方策を検討することも必要である。

  6. 余剰地及び施設跡地については、全市的観点や地域のまちづくりの視点から有効活用について検討するとともに、活用の見込まれない用地は、早急に処分していくべきである。

 以上の取組みに関しては、必要な行政サービスを本人が主体的に選択でき、また、きめ細かな対応を行えるよう、当事者どうしによる自立と自己実現を支援していくための相談体制を確立することが必要であり、生活指導員のあり方も含めて検討する必要がある。

3 市民の人権意識の高揚を図るための取組み

 八尾市総合計画の基本理念の一つである「人権が尊重され共生の心があふれる人間都市づくり」を推進し、市民の差別意識を解消し、人権意識の高揚を図り、人権尊重の社会づくりに努めるためには、同和問題を人権問題の本質からとらえ、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」、「八尾市人権教育のための国連10年行動計画」及び「八尾市人権条例」や、同条例に基づいて設置された「八尾市人権尊重の社会づくり審議会」での審議を踏まえながら、すべての人の人権を尊重していくための人権教育・啓発を推進していく必要がある。

 そのためには、まず、これまでの同和問題に関する教育・啓発の経験や成果を踏まえ、あらゆる場で、多様な人権教育・啓発の機会が提供される必要があり、また、学校や職場における教育・研修を一層充実させるため、プログラムや教材の開発・整備を図る必要がある。啓発活動の主体は、市民自らであり、行政の責務は市民一人ひとりの自主的、主体的な活動となるよう条件整備に努めることである。

 市民が、日常生活において人権尊重と差別を許さない態度や行動を身につけるためには、当事者との交流を促進することや、日常生活の中で人権問題を自由に、率直に話し合うことが必要であり、このことにより偏見や誤解が解消され、理解が得られるものである。また、人権教育・啓発に際し、内容を具体的な人権問題に即した、わかりやすいものにするなど、具体的、実践的な手法による取組みを推進する必要がある。

 企業は、地域社会を構成する法人市民であり、就職の機会均等と人権問題についての正しい理解と認識が必要であることから、今後とも人権研修等が積極的に推進されるよう、支援に取組む必要がある。同時に、人権行政を推進するため、市職員の人権研修の充実が重要であり、業務遂行にあたって人権課題についての情報提供や、効果的な人権研修が実施されるよう取組みを進める必要がある。

 人権教育・啓発にかかる指導者の役割は大きく、特に職場や地域における指導者養成は不可欠であり、民間団体等が行う活動とも連携・協力しながら人材育成を推進すべきである。

 さらに、近年、人権教育・啓発を進めるにあたって、人権関係NPO・NGO等の果たす役割が高まってきており、八尾市においても、これら関係機関と密接な連携を図りながら活用していく必要がある。

 また、人権侵害に直面した市民が、自らの主体的な判断に基づいて課題解決が図られ、かつ、迅速で適切な人権保護・救済が受けられるよう、国においては、「人権擁護推進審議会」答申に基づいて人権救済機関の具体化の検討が進められているが、人権に関わる問題が生じた場合には、身近な場所で解決のための相談が受けられることが必要であり、国の動向も見ながら、さまざまな関係機関と人権相談活動のネットワークを構築していくことが必要である。

4 自立と自己実現、地区内外の住民交流を促進する関係機関等のあり方

(1) 関係機関のあり方

 八尾市では、地区の実態を十分把握し、市民の理解と協力のもとに、同和事業を円滑に推進するため、同和地区出身者、市民、行政のそれぞれの代表が参画する「八尾市同和事業促進協議会」(以下、「市同促」という。)と、地区ごとに組織され、同和地区出身者の社会的、文化的、経済的生活の向上を図り、同和問題のすみやかな解決に資することを目的とした「同和事業促進地区協議会」(以下、「地区協」という。)の協力を得て事業が実施されてきた。その結果、かつての同和地区の劣悪な状況は大きく改善された。しかし2002(平成14)年度以降については、地対財特法が失効することから、これまでこれらの機関が実施してきた事業のうち、特別措置としての同和対策事業を促進する機能に関する部分は、この限りにおいて終了するものである。

 しかしながら、「人権の世紀」といわれる21世紀において、八尾市においても人権施策の積極的な推進が求められているところであり、市同促では長年にわたり同和問題をはじめ広く人権啓発事業や人材育成に取組んで来ており、その蓄積された知識・技術や人的ネットワークを、今後必要とされる人権啓発事業に広く活用すべきである。そのため、市が同和問題解決をはじめ多様な人権施策を推進していくための協力機関として位置づけ、広く人権啓発事業を行う機関として、法人格の取得をはじめ、それにふさわしい名称、組織体制、事業内容に改組すべきである。

 また、地区協については、市同促と連携し、地区における同和対策の推進に大きな役割を果たしてきた。地区協においても、これまで地区で同和問題解決に携わってきた貴重な実績やノウハウを有することから、地区協を周辺地域の住民も参画した組織とし、人権施策等を推進するための協力機関として引き続き活用すべきである。また、地区協は、改組後の市同促と連携し、地区施設とも連携を図りながら、周辺地域を含む生活・就労等のさまざまな相談活動を通じた地域住民の実態・ニーズの把握、地域住民の自立支援のための一般施策の普及・定着、同和地区内外住民の交流促進を通じての「コミュニティづくり」などの機能を担うことが期待される。

(2) 地区施設のあり方

 解放会館は、これまで同和問題の解決のために果たしてきた役割や成果を踏まえ、地区内の中心施設として、今後もより一層、地区施設間のコーディネート機能などの役割を担う必要がある。そして、既に地区内外住民との交流は図られているが、今後更に住民交流を推進し、周辺地域も含めたコミュニティセンター的な機能も持つ施設として、「コミュニティづくり」の拠点として発展させる必要がある。

 また、今後は、周辺地域の住民も含めた、自立を促進するための生活相談や職業相談などをはじめ、生涯学習事業も行うとともに、長年培ってきた同和問題に係るノウハウを活かし、福祉の向上や人権啓発の地域の拠点として、同和問題をはじめとする人権問題の解決を推進する施設として位置づけられる必要がある。そのため、名称の変更を含めて施設の一般利用が一層促進されるための条件整備に努めるべきである。運営には周辺地域の住民などの参画を図り、より効率的、効果的に事業を実施するための手法を検討すべきであり、このような運営が行えるよう、国・府にも制度改正を働きかけていく必要がある。

 その他の地区施設の利用については、すでに周辺地域の住民との交流が進み、多くの施設では全市に対象を広げた事業なども取組まれている。これらの施設は、同和地区出身者の活動の拠点として活用されてきた経緯があるが、同和地区の状況や住民のニーズは当該施設が設置された当時と大きく変化しており、今後は、より広く市民が参加、交流できるよう積極的な運営が求められるとともに、実態に即した施設のあり方の検討が必要であり、各施設の名称や運営組織等の変更を図っていく必要がある。

5 市の推進体制

(1) 市の体制

 今後の同和問題解決のための施策の推進にあたっては、特別措置が終了し一般施策に移行することを踏まえ、人権行政という基本的な枠組みの下で、人権行政の一環として一般施策を有効に活用しながら残された課題を克服していかねばならない。このような認識のもと、さまざまな人権問題とも関連させるとともに、国際化の進展等の行政課題への対応という新たな視点から、人権文化部を設置し、人権調整課、人権国際課と両地区にある解放会館等が位置づけられ、また、教育委員会においては同和教育室が人権教育室に改組された。

 今後も人権問題全体と関連した各部局の施策の連携を図るとともに、総合調整機能を十分に発揮し、同和問題の解決に向けて、計画的な推進を図るよう努めるべきである。

(2) 八尾市同和対策協議会のあり方

 八尾市では、1977(昭和52)年に「真の部落解放が早期に実現できるよう効率的な諸施策全体の推進を図り」市民の理解と協力を得て広く各界の意見を反映するため、本協議会を設置し、その意見具申等にもとづいて諸施策を推進されてきた。しかしながら、現在においても同和問題が解決されたとはいえない状況にあること、とりわけ市民意識の現状を考えると、法期限後においては、「八尾市人権尊重の社会づくり審議会」等とも連携を図りながら、同和問題の解決のための啓発、相談や施策のあり方について審議していく機関として、名称、目的等の変更を含めて改組の上、引き続き同和問題の解決に向け、本協議会の活用を図るべきである。

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