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気候ネットワーク代表 浅岡美恵さんに聴く

[2008年1月21日]

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~

様々な場面でご活躍の方々との対談を通して、たくさんの刺激を頂戴しながら、新しい八尾を創造してまいりたいと考えております。

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~(気候ネットワーク代表 浅岡美恵さん) 写真

今回のまちづくり達人
 気候ネットワーク代表 
浅岡 美恵(あさおか みえ)さん

今回のテーマ「地球市民DEまちづくり~足元から地球環境を守るために」

■COP13で決まったこと、決まらなかったこと

市長今日は、お忙しい中、京都から八尾市にお越しいただきありがとうございます。
昨年は前のアメリカ副大統領のアル・ゴア氏やIPCCがノーベル平和賞を受賞するなど地球温暖化の問題は、市民の間でも非常に関心が高まっています。お正月の新聞各紙の特集もこの問題がいろんな角度から取り上げられていましたね。
浅岡さんは政府の環境問題審議会委員として、またNGOのご代表として昨年末にバリ島で開催されたCOP13(気候変動枠組条約第13回締約国会議)に参加され、大変ご活躍されたと伺っております。
京都議定書の締結からだいぶん年月も経っておりますので、バリ島でのご体験も踏まえて、まずは、グローバルな視点からお話を伺えればと思います。

浅岡:地球温暖化の問題は、アメリカがブッシュ政権になって京都議定書締結後から離脱するとか、削減目標について産業界から疑問が出されたり、科学者の研究報告も誤解されて報道されるとか、いろいろな問題があって、京都議定書ははたして生き延びられるのかといわれた時期もあったのです。
しかし、昨年IPCCから第4次の報告書が出されて、先ほど市長さんがおっしゃったようにアル・ゴアさんと共にノーベル平和賞を受賞するに至りました。全世界で2500人以上の科学者が膨大なデータを解析した結果で、この研究成果をもって温暖化問題については科学的な決着がついたのです。この中で、今世紀の半ば頃までには現時点の化石燃料の排出を半分以下にしないといけない、それでも工業化の前から2℃程度の気温の上昇は避けることができないと報告されています。

市長:確かに、この何年かの異常気象、例えばアメリカのカトリーナとか季節外れの台風とか暖冬とかがありますから、市民も実感として温暖化の問題を考え始めたのではないでしょうか。

浅岡:
本当にそのとおりで、まったなしの課題ですから、全世界が地球市民という意識で取り組まないと克服できません。
途上国も含めて、今後この10年から15年の間に温暖化ガスの排出のピークを迎えますので、途上国も含めてその頃には、排出削減に向かわなければなりません。
ですから日本を含む先進国の削減努力はますます重要になっています。その中で、日本政府の立場はきわめてあいまいであったと言わざるをえません。

市長:日本から、このCOP13のバリ会議を見ていて感じたのは、やはり改めて京都議定書の重みを再確認したことだと思うのです。
国も自治体も一丸となって取り組むべき緊急課題だという認識を新たにしたのですが、先生がおっしゃるように、COP13の中で日本政府がリーダーシップを取れなかったとすれば、残念なことですね。これは、やはり環境問題だけではなくて、アメリカとの経済的、政治的なつながりが影響しているのでしょうか。

浅岡:
COP13のバリ会議では、さきほどの25%から40%の範囲での削減目標を2年後のCOP15で具体的に決めましょうということが決まったのです。あと、わずか2年しかないのですから、少なくとも早く方向性を決めないといけないのですが、日本政府は迷っています。
どうしてかといいますと、経済産業省と経済界はIPCCの結論をまだ受け入れているわけではないからです。途上国から見れば、先進国がしっかりした削減目標を示さない中で、途上国にも責任があるという言われ方は受け入れがたいという主張なのです。
アメリカは京都議定書から離脱していますから、先進国の中で特に日本の態度表明が注目されていたのです。カナダ、オーストラリアも日本と同様だったのですが、オーストラリアは直前に政権が労働党に変わりまして、京都議定書を批准し、削減の目標について態度表明をしました。カナダも最後には同意しました。
でも、日本政府は最後まで沈黙したままで、態度を明確に出来なかったのです。このことが、日本に対する国際的信頼を失わせているのです。

市長:途上国との関係でいえば、日本もアメリカも今日のような経済大国になれたのは、地球資源の浪費も含めて、環境面で代償を払ってきたからですよね。
現在、経済的に急成長してきている中国なども含めて、まだまだ環境問題では課題があるので、そうした面への配慮もあったのかなという印象はあります。
環境と経済の問題は、難しい課題があると思いますが、地球環境を守った上での経済という発想に切り替える必要があると思います。
毎年、お正月に八尾市の商工会議所と共催で年賀交礼会を行うのですが、私は、今年の挨拶で環境問題について話をしました。世界規模で地球環境があぶないことは避けることができない事実で、グローバルな視野で考えながら、地域であるいは個人で何が出来るかを、もう一度、市民の皆さんに問うてみたいということを話しました。
この問題を話させていただいたのは、問題の深刻さとともに、本当に身近なところから行政でも、企業でも、市民でも取り組みやすい課題だと思ったからです。経済界には抵抗感があるというお話ですが、私は、この課題に真正面から取り組んでいく企業が21世紀に生き残れる企業だという気がします。

浅岡:アメリカとの関係でいえば、今回の会議の特徴は、世界はブッシュ政権の先を見ていたことです。現在、大統領選挙の予備選挙が闘われていますが、民主党と共和党のどの候補者が大統領になっても、安全保障であれ、温暖化対策であれ、今年の11月には明確に変わることがどの候補者の選挙公約からも明らかになっています。
アメリカの議会は既に先に変わっていますし、東北部や西部の諸州では、日本よりはるかに厳しい環境規制のもとで動いています。そういう意味で、政権が変わるということと温暖化政策が変わることが、これほどセットとなり、明確になった会議はこれまでなかったことではないでしょうか。温暖化の問題は安全保障の課題になっているのです。世界が温暖化問題を気候安全保障の視点で見るようになり、大統領や首相が集まる今年のG8のテーマになっているのです。
日本は、そのサミットの議長国として、この問題でのリーダーシップが問われているのです。


市長:確かに、テレビや新聞紙上でしか判断できないのですが、マスコミの解説を聞きましても日本の態度が明確でないことにはジレンマを感じておりました。
報道では、最後にアメリカを引っ張り出す役割を果たしたというものもありましたが、先生のお話では2年後のCOP15ではアメリカがいよいよ本腰を入れて出てくるかなという印象ですね。
現実には、いろんな意味でアメリカは世界をリードしているわけですから、環境の面でもぜひ世界をリードしてほしいという思いを持ちながらこの会議を見させていただいたところです。

浅岡:私は、地球環境問題だけでなく、先ほどの安全保障や経済の問題も含めて、これほど大きな時代の転換点はこれまでなかったのではないかという印象を持っています。
日本でいえば、明治維新の直前のような感じで、世界史的に見ても、200年単位の産業革命以来の世界の枠組みの転換点のような気がするのです。そのことに世界もやっと気がつきはじめたのではないでしょうか。これから二酸化炭素の排出量を現在の半分以下に、この40年から50年の間に行う。このことは強固な意志がなければとうてい出来ないことです。
これまで、200年以上化石燃料を使って工業化の道を歩んできたわけですから、それが使えない時代に入って、人類はどういう方法でどのような低炭素社会をつくっていくかが問われていると思います。大きな枠組み議論は国際交渉の場でしますが、結局は、足元での取り組みの集積が地球全体での低炭素社会をつくっていくことになるのです。先ほど市長さんがおっしゃったように、それぞれの地域での取り組みであり、工場ごとの取り組みであり、交通網のあり方なのです。本当に地に足がついた問題を180度くらいの発想の転換をして取り組んでいく必要があります。
そういう意味では、ヨーロッパは1980年代の後半から真剣に取り組んで低炭素社会への道を歩んでいます。そうした中で、日本政府の態度があいまいで、本当にどちらに向くのかみんながわからないのです。

市長:どうしてでしょうかね。それは日本の国民性とかも関係があるのでしょうか。

浅岡:
そうではなくて、日本政府の意思がまだ明確ではない、心の準備が出来ていないのだと思います。日本は、それなりの経済力があって重要な位置にあります。
そういう意味で、日本が前向きになれば世界も前向きに進みますし、後ろ向きになれば、前進を阻むという大変重要な位置にあるのです。厳しいようですが、私たちNGOから見れば、日本政府にはその自覚が出来ていないのではないかと思えるのです。
バリ会議でのエピソードを紹介しますと、日本でも報道されましたが、環境NGOで会議の最終日の金曜日に地球をタイタニック号になぞらえた一面広告を出しました。船長はブッシュさんと福田首相、カナダのハーパー首相です。
もし、日本政府が前日の木曜日までに明確な方針を出しておれば、この意見広告は使えませんでした。こうなるのではないかと懸念して準備されていたものですが、残念ながら、そのとおりになって、そのまま使えたのです。
ようやく、最近は官邸サイドでも、このままでは今年の7月に洞爺湖で開催されるG8の議長国としてまずいのではないかという動きが出てきていますが、まだ従来の方針と混在しています。
オーストラリアは政権交代によって、今回のバリ会議で劇的に温暖化対策への方針が変わりましたが、オーストラリアでは国の政権が変わる前に地方自治体が変わっていたのですね。
そういう意味では、中央と地方が両輪となって取り組まないと世界の温暖化対策に貢献できないですし、日本の経済もうまくいかないと思うのです。

市長:
私は、昨年の5月1日に市長に就任した際に、マニフェストの中で循環型社会をめざすということを明確に表明しています。ごみの問題でも、まだまだ市民との十分な意見交換が必要だと思っています。
環境問題は市民との協働がなければ前進しませんので、そのためには、なにが課題かを検討するように職員に指示しています。職員と一丸となって、このマニフェストの実行計画を策定し、地球環境の問題も市民と率直に意見交換を進めながら新たな方向性を出していきたいと考えています。

浅岡:市民と一緒にという、市長さんの決意はとても重要だと思います。世界が動くときには、すべての主体が一緒に動かないとだめなのですね。国のレベルだけではなくて、自治体のレベルでも一人ひとりの市民のレベルでも動かないといけない。
しかし、個人の努力で、「みなさん頑張りましょうね」というのではだめなのです。そうではなくて、社会とか経済のしくみもあわせて変わっていくことが必要なのです。
そういう意味では、政治のリーダーシップが決定的に重要だと思うのです。このことが必要だとか、これを実践しましょうとか呼びかけて、情報をお互いに共有しながら議論をしてしくみを変えていくことが本当に求められます。具体的な行動に移っていかないと、地球温暖化の問題には残された時間があまりないという危機感が私にはあります。

■環境と経済を両立させるために

市長:物事を決めるのに行政は時間がかかって非効率だとよく言われます。しかし、一方では民主主義は「時間をかけてこそ、決まったことが共有される」とも言われます。その中で、うまくバランスをとりながら、新たな方向性をきっちりと出していく必要があると考えています。
実は、私のマニフェストを実現するための組織整備として機構改革を今年の4月に実施いたします。その中で、これまで市民産業部と環境部とが別々にあったのですが、これを経済環境部という一つの組織に統合したのです。
もともと「環境」と「経済」は統合して考えることが重要だという認識を持っていました。「環境アニメイティッドやお」という団体が主催した環境フェスティバルで「企業と環境は切り離して考えられないし、中小企業の集積する八尾のまちづくりには企業との協働が欠かせない」という趣旨の挨拶をしたのですが、思い切って組織統合を行いました。

浅岡:地球環境の問題では、市民の意識もずいぶん変わってきたと思います。地球資源には限りがあることが共通の市民意識として定着してきているのではないでしょうか。レジ袋を拒否して、買物袋を持参することで、どれだけゴミが減るのかという声もありますが、これは環境意識の現われの指標として、とても大切な運動だと思います。
特に経済と環境との関係では、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の経済のしくみに、必要なものを必要な範囲でつくっていくことが収益につながるという新しい軸を入れないといけないのですね。そこに付加価値をつけていく能力を日本の事業者は持っていると思うのです。
そういう意味で、八尾市では環境と経済の組織が統合されたことは、市長から市民に強いメッセージを発信されたということになりますね。

市長:市民の意識という点では、八尾市民の環境意識はとても高いと誇りを持っています。これから一層市民と行政との協働が重要なのですが、その中で地域の企業も企業市民として果たしていただくべき社会的な責任が大きいと思っているのです。
高度成長期には、環境破壊をしながら経済発展を遂げたという側面は否定できないわけですから、これからは地球環境を守りながら経済発展を遂げる新たな道にチャレンジしないといけない。八尾の企業はその可能性を十分に持っています。企業が努力することで、市民にも影響を与えるといった相乗効果があると思います。
特に、地球環境の問題は、行政だけで出来ることに限界があります。この問題にこそ、市民・企業・行政が一体となった地域力、市民力で取り組むことが必要ですから、今回の機構改革がそのきっかけになることを期待しているのです。

浅岡:環境意識も重要ですし、意識が変わらないと何も始まらないのですが、それだけでは不十分で、具体的にこの八尾市でも2010年とか目標を決めて二酸化炭素の排出量の具体的な削減に踏み込む必要があります。
市民・企業・行政のそれぞれのセクターが目標を持つことがとても重要なことなのです。そのために、何をしなければならないか、どういう知恵を働かせなければならないかを真剣に考えなければなりません。企業にとって、そのことが将来の事業活動につながるという確信を持っていただきたいですし、必ず、そのことが企業の収益につながります。なぜなら、そういう企業は技術的な革新を遂げているので、21世紀の事業活動で、いち早く有利な立場に立てるからです。
この点では、アメリカの連邦議会での取り組みが参考になります。連邦議会では共和党と民主党が一緒に2050年までの温室効果ガスの削減目標を決めました。毎年のスケジュールがあって、大規模事業者に排出権を配分するのですが、達成できないと、すごい罰則がつくのです。ですから、遅れてでもいつかは削減 目標を達成しないといけないしくみになっています。
とにかく、IPCCの報告では一生懸命頑張っても2℃程度の上昇は避けられないわけです。もし、これが3℃まで上がると、緯度でいうと450km南へいくことを意味します。大阪が奄美大島ぐらいになるとイメージするとわかりやすいと思いますが、とても今世紀の出来事とは思えないですよね。
ですから、2℃以上の上昇にならないように一生懸命頑張らないといけないですし、そのためにみんなが知恵を寄せ合って行動に移すべきです。行政や公共 サービスの分野でも排出削減が求められますし、世論を動かすという意味で、市長を先頭にした行政職員の皆さんの役割や責任はとても大きいといえるのではないでしょうか。

市長:私は、自治体の職員はしくみを考えるプロフェッショナルだと思っています。八尾市では、先進的な取り組みとして、ごみの分別収集と指定袋制の実施をしたのですが、この時には全管理職員が地域に入って自治会ごとに説明会を行っているのです。
このように、自治体職員は地域に密着していますから、市民や企業との協働を具体的に実践する上でとても有利なのです。
例えば、ごみ収集の現場職員は毎日、市民と顔をあわせているわけですし、福祉関係の職員も地域の担当を持っています。環境だとか福祉だとか、特定の分野に限らず、職員が横に連携して環境や福祉のこれからの方向性を市民と対話しながら、新しい公共サービスのあり方を考えることが、これからの自治体のあり方を考えることにつながると思っています。
先ほど、180度の発想の転換とおっしゃいましたが、実は財政の問題を考えますと、国も自治体も本当に苦しいのです。
でも、お金がなくても出来ることがないかを検討して、市民・企業と行政との協働で活動できる自治体とそうでない自治体では大きな格差が出てくると思っています。
例えば、ごみを資源としてリサイクルするなどはまさに発想の180度の転換で、地方へ行きますと生ごみを堆肥に変えて農産物をつくって、それを学校給食に利用するなどの施策を行っていますね。これも市民の協力がないととてもできないことで、「もったいない」という気持ちを共有して、環境負荷を減らすために知恵を出し合うとか、先進事例を検討するということはとても大切なことだと思います。

浅岡:日本を始め、先進国はこれから2020年までに20%から40%のレベルでの排出削減に具体的目標をもって取り組まねばなりません。
2050年には、多分、アメリカの法案でも70%ですから70%から80%の削減目標にはなると思います。それでやっと、2℃の上昇で止めることができるか、3℃までいくのかという話なのです。
国際的な交渉の場で環境NGOからアメリカや日本の経済界は4℃倶楽部と揶揄されているのです。どうも彼らは、4℃の気温上昇はやむを得ないと考えているのではないかとNGOから見られているのです。
EUは、2℃倶楽部といわれています。2℃でなんとか押さえたいというのがヨーロッパでの共通認識になっているのですね。
4℃の気温上昇というのは、とてもじゃないですが未来の子ども達に責任を負えるものではありません。

市長:私も、ヨーロッパへは何度か 訪問しまして、その環境意識の高さには感銘を受けました。例えば、リターナル瓶などの活用はものすごく進んでいます。新しく瓶をつくるなら、それに税金を 払いなさいということで、環境に負荷を与えるようなことを新たにするなら、きちんとその分の負担をしなさいとなっているのです。
それを見ていまして、私も小さい頃に家にあるビール瓶や一升瓶などを販売店に持っていって、お小遣い替わりにしていたことを思い出しました。(笑)
昔は、ごく当たり前にやっていたことですから、デポジット制度などは、国がやる気になれば出来るのではないかと思います。
それから、ヨーロッパの新聞では、気象欄のところに必ずその日の紫外線の強さが掲載されています。
これを見ると、温暖化やフロンガスの影響で地球生命の維持が可能かということが日々問われているような気持ちになりますね。特に、最近の気象変化の激しさを考えると、これまでの常識では判断できないものがあります。

浅岡:本当にそのとおりです。過去の気象データでは次の対策が取れなくなっているのです。
オゾン層が破壊されて、南極とか北極に近い方のオゾンホールが大きいので、温暖化の影響も局地に近い方が大きいのです。緯度の高いヨーロッパで地球環境問題に関心が高いのは、深刻に受け止められるだけの変化が既にあるからなのです。
でも地球全体で、誰にでも環境の変化がわかる段階になっては、もう遅いのです。市長さんが市民と会われるときに「みんなで地球環境の問題を学んで取り組みましょう」というメッセージを発信されることはとても効果があると思います。

市長:アル・ゴアさんの「不都合な真実」を見まして、地球の温暖化がここまで来ているのかと非常な衝撃を受けました。
新年の職員への挨拶でも、このことへの取り組みが重要だと強調しました。ぜひ、多くの市民の皆さんに見ていただきたい映画です。
少しグローバルな話題がはずみましたので、今度は視点を変えて市民一人ひとりの実践として何が効果的かについてお話いただけますか。

■身近な取り組みは「住まい」から

浅岡:私は、家のつくり方が最も温暖化対策として大切で重要だと思っています。国や自治体はこの点をもっと強調してメッセージを出すべきではないでしょうか。
家を新築する場合や改修をするときに保温性の高い構造にすることは、長い期間にわたって、劇的にエネルギー消費量を減らすことができるのです。国がよう やく新築の建物で保温性の高いものに若干の税制の優遇措置を入れましたし、次の予算では改修にも優遇策を入れるようです。
自治体も、こうした住宅には若干でもいいですから優遇措置を入れて、施主の方に適切で十分な情報を提供できる工務店を育成し、助言しやすい状況を作り出していただきたい。情報発信をするだけでもずいぶん効果があると思います。
一番簡単なのは窓を二重にすることです。これは、お金はあまりかかりませんし、これだけでも随分効果があります。夜中の寒さや明け方の寒さが全然違います。
高齢者にとって高血圧や心臓の発作を起しにくいとか、健康上も効果があります。これに、バリアフリーや耐震対策を施せば、それこそ一石三鳥の効果があります。行政がちょっと後押しをする政策をとってPRすると市民もやってみようかなという気持ちになります。
誰か一人がやってみて、「よかったよ」と周りの市民に伝えることが、しっかりした地域社会をつくっていくことにもつながると思うのです。

市長:
住宅については、石の文化と木と紙の文化の違いや、100年200年先を見据えた都市計画の差があるのかなと思います。ようやく、日本政府も200年住宅という構想を出してきましたね。企業と環境と同じことが環境とまちづくりにもいえると思うんです。
住宅政策に関しては、建築基準法とか開発指導要綱とかの規制がありますが、その中に環境に関する誘導策を入れ込むことも検討する必要があるということですね。
具体的に考えると、先生の指摘された二重窓にするなどの構造上の問題の他にも、家庭に生ごみの処理機を導入するとか、大きな木を植えるとか、太陽光発電 などの自然エネルギーを導入するとか、環境先進都市をめざす上で、そういうことを総合的に評価して誘導策を考えることが課題だという想いは持っています。

浅岡:
市民の皆さんもきっと、いい家を作れるなら作りたいと思ってらっしゃるのですが、でも、いざとなると情報が不足しているのですね。行政から情報を提供してもらうだけでもいいですし、 いい設計者や施工業者のネットワークをつくって行政とうまく連携してやれれば更にいいですね。
市長がそういうことをおっしゃると、建築業者の方も、自信をもって市民に宣伝するとか提案をされるとかの誘導につながると思うのです。建築基準法を改正しないと無理だという意見もありますが、啓発をしっかりするとか、ちょっと応援するしくみをつくることで出来ることもあるのではないでしょうか。

■中小企業のまちでは、まずKESから

市長:確かに、住 まいはまちづくりにとって、いろんな意味で関わってきますが、法律や条例などの規制で誘導する方法と、「地球環境にどのような姿勢で取り組んでいるかが企業にとっても評価の対象になって来ましたよ」と啓発して誘導する方法がありますよね。「環境対策を売りにして業績を伸ばすことが、これからのトレンドですよ」というふうにメッセージを出すことも重要だと思うんです。
その意味では、足元からの実践ということで八尾市役所もKES(環境マネジメントシステム・スタンダード)のステップ2の外部認証を取得し、環境改善に 取り組んでいます。行政がまずモデルを示して市内の事業者の皆さんに取り組んでもらえればと思っています。市役所も人員削減の中、新しい仕事が増えて職員の皆さんには苦労をかけるのですが、頑張ってほしいと思います。

浅岡:KESは京都からはじまったので自慢するわけではないのですが、費用もあまりかかりませんし、本当にいいシステムですね。事業者の方も行政から少しでも補助やサポートがあればやってみようという気持ちになるのではないでしょうか。
実は、一昨年、私は京都弁護士会の会長を務めたのですが、弁護士会としてKESに取り組んだのです。もちろん全国の弁護士会で始めての試みです。
実際にやってみますと、頭の中でわかっていたことでも、やってみるといろんな発見があるのです。なるほど、こういう発想が我々に欠けていたのかと気づく ことが本当に多かったです。結果的に無駄を省くことになりますし、市長さんが言われたコスト削減につながります。一年ぐらいやってみますと、「あっ!これがPDCAサイクルなんだ!」と実感できますね。
中小の事業者で、特に製造業の人は、それなりにコスト削減に取り組んでおられるのですが、業務全体を見渡して取り組むという発想の仕方が意外と弱いように思えます。そういう意味では、自治体から啓発をするとか、応援できるしくみは、ぜひつくっていただきたいですね。

市長:職員にとっては、山ほどの仕事がある中で、何故KESに取り組まなければならないか、職員が共通の認識を持つためにも地球環境の深刻さについての意識改革が必要でしょうね。 
環境に配慮したいろんな視点から仕事のやり方を見直すことが、これからの行政マンに必要な資質になってくるのではないかと思います。そういう姿勢が身につけば、仕事だけでなく家庭に帰っても、市民との関係でも、ごく自然に環境に配慮した実践が出来るようになると期待しているのです。

浅岡:まずやってみることが大事で すね。やってみることで、しくみが変わったりするのです。それも個人の努力に期待するのではだめで、決まった一連の手順で組織として動くことで、初めて意 識もしくみも変わってきます。そのためには、ツールが必要でKESは使いやすくて負担も軽い、とてもいいシステムだと思います。

■未来を生き抜く子どもたちのために

市 長:地球温暖化の問題は、21世紀を貫く課題ですから、その中で生き抜く子ども達への責任という視点で、教育の問題はとても重要だと思うんです。むしろ、 学校で学んだことを親に伝えるという効果も重要かもしれませんね。実は、八尾市では市内の全ての幼稚園、小中学校で「環境配慮の取り組み」を進めており、 その中の1校が環境大臣賞を受けているのです。この学校では、給食の残飯を生ごみにして堆肥をつくったり、空き缶などを学校に集めて売ったお金で木や花を 植えたりして率先して児童たちが環境学習に取り組んでいます。こういう実践が評価されたのだと思います。
私自身も、たまに子どもから「蛇口をしめてよ!」とか「電気を消した?」とか言われるので、環境教育は効果があるなと実感しています。(笑)
行政の取り組みとしては、環境部のごみ収集の現場を担当する職員に、学校で環境教育もやってもらっています。お買物ゲームの中で、環境負荷の問題を子ども達に考えてもらうという取り組みで、これはかなり先進的な実践だと自負しています。これまでは、ごみを収集するという視点から仕事をしていた職員が、教育実践を通じて自らも地球環境の問題への認識を深めて、自信と誇りを持って子ども達に伝えていく。子ども達も現場で起こっている生の声や生活感覚から環境問題を学ぶ。このことは、とても大事な視点だと感じています。

浅岡:いいお話ですね。地球環境の問題は国家100年の計で、今の子どもにとっては人生を通じた課題で、そういう時代を生き抜いていかないといけないのですからね。
現在の削減は大人の責任ですが、子ども達も近い将来に直面するわけです。その時に、一番効果的なのは、子どものときに経験した原体験とでもいうべきものです。
こういうことは駄目だとか、こうしたら効果的だとか、実際に経験して会得した皮膚感覚のようなものを子ども達に伝えていけるような教育が求められるのでしょうね。

市長:学ぶという視点は大切ですが、先生がおっしゃるようにするには、楽しさというか遊びの要素も必要ですね。自然な遊びの中から、感動とか新しい発見をすることによって、子ども達が自然と環境保全への視点を身につけ、成長する。行政としてそういう場をきっちりと環境整備していくことが我々の課題だと思っています。

浅岡:
それは、本当に重要な視点ですね。自然を感じる場合も遊びの中で感じてもらって、エネルギーと私たちの暮らしがどのようにつながっているのかを考えるとか、ごみの問題でも、子どもは親から家庭の中で言われると反発すると思うのですが、自分で「なるほど!」と納得したことを逆に親に意見できるようになれば、それは、子どもにとってうれしいことなのです。

■「地域力」と「市民力」を環境保全に

市長:先日テレビ で見たのですが、東京の方でどぶ川を、地域の大人も子どもも一緒になって再生している取り組みがありました。家庭を出発点にして地域全体に広げていく、そこに企業も協力する、地域ぐるみで行うこういう活動が八尾市でも広がって行かないかなと期待しています。
実は、八尾市には、市民の自主的な取り組みを支援する基金が3つあります。市民活動支援基金、地域安全・安心のまちづくり基金、地域福祉推進基金です。 私は、市民活動が縦割りになってしまうのはよくないので、3つの基金をリンクして使えるようにならないかなと考えています。
環境も福祉もまちづくりも別々に考えるより、市民は日常の生活感覚から幅広く知恵を出し、市の職員はそれぞれの担当分野からお互いに知恵を出せば、きっと、ばらばらに取り組むよりいい活動ができると思うのです。ここに、これからのコミュニティのあり方とかまちづくりの原点があると思います。
今年は、市制60周年で「地域力」をコンセプトとしています。ですから、こうした節目に地域の自治のあり方などを、市民同士、職員同士、市民と職員の間 同士で議論を深めることが大事ですね。もちろん、市民の中に企業も入っているわけですが、どうも企業・市民と言わないと、企業さんから「わしらは関係ないのか!」と言われそうで・・・(笑)

浅岡:企業は、企業活動としての環境対策があり、それはとても重要です。家庭に比べるととても比較にならない排出主体ですからね。モノを製造するとかサービスを提供する中で排出削減の努力をしていただくことは当然です。
一方では、地域社会の一員として、その地域を住みよくしていくための知恵も経験も持っているので、地域の活動にも参加していただければ大きな取り組みが可能になります。そこは、ぜひ市長さんから事業者の皆さんに強調していただきたいですね。
市民が地球環境のあり方や地域のあり方について関心を持って参加していただくことがとても重要なのですが、私が気候ネットワークなどNGO活動に参加して10年が経過して思うのは、日本はまだまだ市民が参加できるような社会にはなっていないのではないかということです。
気候ネットワークもやっと専任スタッフを置いて活動できるようになりましたが、何とかかろうじてやれている状態です。ボランティアで、余力があればやりましょうというレベルでは大きな力にはなれないのです。
この点では、アメリカやヨーロッパの社会が市民社会といわれるのは、市民セクターの意見をまとめて、行政との間をつないだり、市民活動間を調整したり、 啓発活動をすることが、仕事として出来る社会になっているからです。彼らが持っている予算を見ると、日本のNGOやNPOとは桁が3つぐらい違います。こ れが先ほど市長さんも言われた「地域力」や「市民力」の差になっているのです。
行政からは、財政が厳しいので、「市民の皆さんボランティアで参加をお願いします」ということが増えていますが、これでは限界があります。市民活動も社 会を支える重要なセクターですから、仕事として社会全体で支えていくことが必要だと思います。それには、一種の寄附文化の醸成も必要ですし、税制上の優遇 措置も必要です。アメリカやヨーロッパでは、そのような団体に行政からもお金が出ていることも多いのです。誰かが、頑張って自発的にやるだろうとか、意識 のある市民に期待しようというのでは何も変わりません。
八尾市では、市民活動を応援しようというしくみがあるようなので、市長が言われたように活動に足を出す人の肩を押して、その基金も行政だけでなく市民全体で支えるようになれば、気楽に市民参加できる環境になるのかなと思います。

市長:
確かに、寄附文化という点で は、アメリカなどは桁違いの寄附文化がありますね。日本では、そういう点では寄附文化は根付いていないのは事実で、ボランティアでも企業メセナでも、自分 達が活動している団体は多いですが、これにもう一歩踏み込んで、寄附でそうした活動を支えようという意識は低いですね。
どうすれば、そういう文化が育つのかと考えるのですが、例えば、学校で環境でも福祉でもまちづくりの課題に取り組んでお金を集めてきた場合、その集まっ たお金と同額を行政が支援する制度なども考えられますね。この考え方が、小学校区や中学校区といった地域に広がっていけば、頑張る地域は、まちづくりが進みますが、何もしないと取り残されるような、いい意味での地域間の競い合いもあってもいいのかなと。

浅岡:
それは、フィフティ・フィフ ティの逆バージョンですね。この制度は、ドイツで始まったのですが、学校で先生と生徒がいろいろ工夫をして光熱費を削減すると、その削減額の半分は、その学校で自由に使っていいですよというしくみです。自由に使っていいとなると子ども達はいろいろ考えるのです、そのいろいろ考えるということがいいのですね。
市長の発想は、その逆バージョンで、頑張ってお金を集めたら応援しますよというのは、なかなかおもしろい発想ですね。

市長:
私は、どちらかというと加点主義なので、こんな発想になるのです。今日は、環境がテーマなので、学校で出来ることを考えると、例えば、緑のカーテンをみんなで協力して張り巡らせる、そのために堆肥をつくってゴーヤなどのつる性の野菜を育てれば収穫もあります。
クーラーを設置してほしいという要望も強くて、出来るだけの努力はしますが、自分たちの努力で室内温度を下げられることを楽しく学ぶ、地域も協力するという活動が広がり、その結果として快適に学ぶ環境が実現できれば理想的だと思うのです。
学校には他にも課題がいっぱいあって、一挙に解決できないのは市民に申し訳ないと思いますが、うまく地域の活動と行政の活動がかみ合えば、そういう問題も解決できる場合もあると思うのです。こうした取り組みに、私はチャレンジしたいし、職員はもとより、市民や企業の皆さんに訴えていきたいのです。そのよ うな実践が、八尾市全体に広がり、やがて大阪全体に広がり、先進的な取り組みとして全国的に環境先進都市としてのメッセージを発信できれば、市長として本望だと思っています。

浅岡:
自治体の長として、そうした 気概はとっても重要だと思います。私は、住民には誇りが必要だと思っています。「自分たちのまちをこうしたいんだ、このまちにはこういういいところがある んだ」と、思えることが大切です。でも、これは努力しないと引き出せないのですね。先ほどの緑のカーテンなどは地域ぐるみで協力しないと出来ないことですから、ぜひ取り組んでいただければと期待しています。

■自転車のまち八尾で京都議定書支持宣言を!

市長:それから、自然エネルギーといえば、八尾市は土地が平坦なところが多いので自転車がとても多いのです。健康増進もかねてもっと普及したいのですが、ひったくりや、自転車事故が多いのが悩みの種なのです。
普通は交通事故の3割程度が自転車のからむ事故なのですが、八尾では4割も占めるのです。先ほどの企業との関係では、自転車もひったくりの防止のためにおしゃれなデザインの蓋つきの前かごをつけるとか、事故防止の反射板を最初からつけて販売するなど付加価値をつけて販売することが企業にとってセールスア ピールになればいいなと思っているのです。

浅岡:おしゃれな蓋つきの前かごですか、それはおもしろいですね。自転車はエコロジーな乗り物でとっても大事ですから、それは八尾市だけではなくて日本全体で必要なことですね。
費用もかかりますし、地理的な条件もあって難しい課題ですが、自転車専用道路をどうやって確保するかが交通マナーの向上とあわせて課題だと思うのです。 モデル的にでも少しずつ伸ばしていくと、その有用性が理解されて、少し自動車には遠慮してもらおうということになると思うのです。

市長:交通法規では、自転車は車両なので原則車道を走らないといけないのですが、特に車の通行量が多い市街地では、歩道上を自転車が走ることが可能となっているところが多くなっています。
そうすると、今度は歩行者が危険になるという矛盾があります。なかなか土地を確保出来ない中で自転車専用レーンをつくっていくのは厳しい課題ですが、これからの発想としては自転車専用道路もつくりたいという思いはあります。
そろそろ時間となりましたが、浅岡先生から、ぜひこれだけはというメッセージがあればよろしくお願いします。

浅岡:京都議定書のことに関していえば、アメリカではこの議定書の支持を意見表明している自治体が600以上あるのですが、日本では残念ながら明確な意思表示をしている自治体は数えるほどしかないのです。
日本は、言葉では言っているのですが、はっきり自覚して、はっきり行動しているところが少ないのです。そこが、あいまいな国と思われるところなのです。
「八尾市では、ちゃんと京都議定書を支持して、自分達はこうしてやります。市民も企業も行政も実践します」。このようなメッセージを明確に出せば、すごく新鮮な感じがするのです。日本は、まだ残念ですがそういう段階です。ぜひ、先陣を切るという気持ちで、そのためのアクションは何かということを考えてい ただければと思います。
八尾市は人口27万人ということですが、八尾市ぐらいの規模が環境問題では一番取り組みやすいのです。環境対策で成功している自治体はだいたい人口20万人から30万人が多いのです。

市長:お忙しい中、貴重なお時間をいただき、京都からわざわざ来ていただいて、ありがとうございました。今日のお話の中には京都議定書からの国際的な流れ、地域で取り組むべき課題、また自治体としての取り組み課題など、貴重なメッセージをいただきました。それらを参考としながら、八尾市の職員ともども地球環境の保全のために頑張ってまいり たいと思っています。ありがとうございました。

浅岡:ぜひ、いいモデルを築いていただくことを期待しております。ありがとうございました。
元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~(気候ネットワーク代表 浅岡美恵さん)写真

平成20年1月21日

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