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関西学院大学専門職大学院 教授 石原 俊彦さんに聴く

[2007年6月29日]

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~(関西学院大学専門職大学院 教授 石原 俊彦さん)写真

今回のまちづくり達人

 関西学院大学専門職大学院
  教 授 石原 俊彦(いしはら としひこ)さん

<石原氏プロフィール>
  公認会計士。本市の行政経営アドバイザーを務める。「やお未来創造会議」座長として、市民とともに行政活動を外部評価する仕組みを考える。

市長:
石原先生にはお忙しい中、対談の時間を取っていただき、ありがとうございます。私が掲げています「元気八尾再生」の実現に向け、まちづくりに携わる市民や企業、専門家の方とざっくばらんに対談させていただくことで、今後の八尾のまちづくりや行政運営に参考にさせていただきたいと思っています。
本日は、名古屋市や青森市をはじめ数多くの自治体改革に携わっておられる石原先生から率直なご意見をお聞かせいただき、今後の八尾市の行財政改革のあり方につ いて語り合えればと思っていますのでよろしくお願いします。

石原:こちらこそお招きいただき、感謝いたしております。私も長年、八尾市とお付き合いをさせていただいておりますので、今日のお話が何かのお役に立てば、大変光栄です。

市長:まず、初めに、石原先生は他の自治体の行財政の状況を色々と見られていると思います。北海道夕張市で財政破綻が起きたことは報道でも大きく取り上げ られたところですが、実際に今の地方自治体の財政運営にどのようなことが起きているのか。専門家から見て、まず話をお聞かせください。

石原:地方分権の時代の流れの中で、ますます複雑多岐になる行政ニーズに対応しようと、全国の多くの自治体が財政問題で悲鳴を上げており、中には自律しきれず、夕張市のように財政が良くない自治体も出てきています。それには国も相当危機感を持ち、色々な改善・改革を進めています。
その中で、地方財政健全化 法案が先の国会で成立しまして、今後、自治体財政の借金体質に関する指標で財政状況の悪い自治体が、実質的にランキング付けされることになります。ランキングが付けられると、その自治体には是正勧告がされます。
地方分権・地方自治と言われる中でも、少しですが中央集権的なイメージが強まってきています。このことは、地方自治に携わる自治体の職員全体として、このような状況を招いたことへの反省といいますか、謙虚さを率直に持つ必要がまずあるかと思います。
これまで国は一般会計を中心に自治体財政を見てきたわけですが、それでは不十分だということで、特別会計のほか、病院などの地方公営企業会計もすべてあわ せて自治体の財政状況を見るようになります。まさに、自治体の生き残りをかける行財政運営が試される時代に突入したと言えるのではないでしょうか。

市長:地方分権の流れの中で国の三位一体改革があり、税源移譲が進められてはいますが、石原先生がおっしゃるように、多くの自治体が借金を抱えています。
 これまでかつての自治体運営では、道路や下水道、文化施設など行政の一定のサービス水準を確保するため、まさにどこの自治体も地方債という借金をしてお金 をかけて横並びになろうというものでした。八尾市でも、一般会計、特別会計、企業会計にいたる市全体の借入金残高はおよそ2,200億円になっています。
 これからの自治体は、確かに国から様々な財政指標を突きつけられ、ランキング付けされながらコントロールされる状況が見えてくるのかなと大変な危機感を持っています。
なぜなら、民間側から行政を見た際に、その自治体のランキングの位置で借り入れ金利に影響してくるということもあると思いますね。自治体の財政運営が悪化する中で、しっかりと自治体がその状況を立て直さないとやがて銀行が自治体を信用できない状況になってしまうと思うからです。
八尾市は 99.7%という厳しい経常収支比率になっていますが、ここ2年ぐらいで5~6%も上がってきています。市の貯金である基金を取り崩すこともしており、ここ数年で財政状況が悪化していることは問題で、そのことは数字的にも明らかです。
横並びのための自治体間競争の時代は終り、これからの自治体運営は、本当に何が必要で、何がいらないのかを市民と行政で議論し、選択しながら進めていく時代だと思っています。

石原:私は、長年、八尾市で色々とお手伝いをさせていただいていますが、八尾市の行政水準は従来から基本的に高いと思っています。特に職員の能力の高さというのは、他市に遜色なく、秀でていると思います。大阪府下や全国の自治体と比較しても、八尾市が色々とやってきた取り組みは非常に先進的ですね。
そういった中で、今後、八尾市では、新市立病院建設の起債償還や病院経営のための一般会計からの繰入れなどがあり、様々な財政健全化への対応が求められると思 います。
その中で、八尾市の強みは、役職職員、とりわけ課長補佐級や係長級の年齢が比較的若く元気なことです。団塊の世代の職員が、あと1~2年で本格的に退いていきますが、それからやっと職員の年齢構成を考えようという自治体も多い中で、八尾市はあらかじめそれに対応しようとしている。
課長補佐ですと一番若い方で37歳ぐらい、これは恐らくこの近隣、あるいは阪神間の地方自治体でもめずらしいと思います。
私は、自治体の改革には、職員一人ひとりの仕事に対する意識改革とそれをうまく機能させる庁内組織の改革、そしてあとは市民との協働が必要であると考えています。
八尾市では、次々に若い世代の課長補佐と か係長が誕生している現状を、やはり八尾市役所の職員さん自身がすごい職場だと意気に感じて欲しいですね。

市長:今、職員の話をしていただきましたが、僕も八尾市長に就任してまだ数ヶ月そこらですが、八尾市には非常に優秀な職員がたくさんいてくれていると思います。
しかし、優秀な職員がいる一方で、なぜ、財政状況が悪くなるのかという思いもあります。
行財政改革には、やはりトップがどんどん判断をしないと組織や職員は動かないと思っています。
僕の場合、どちらかというと職員にいろんなことをざっくばらんに言いすぎるから周りからいつも心配されていますが(笑い)。でもそこまで言わないと動かないという思いもありますし、職員の持つ知識や経験を十二分に発揮できるフィールドをトップが提供しなければならないと 思っています。
僕は50歳ですが、私前後の年齢で、課長でバリバリがんばっている職員、それから30代後半から40代前半の課長補佐、係長の職員と、ちょ うどこの10年間をワンスパンとした人材がこれから育っていかないと八尾市はもたないと思っています。
これから八尾市でも部長職の幹部職員をはじめ、団塊の世代の職員が多数退職します。ここ2~3年でこれまでの頭でっかちな世代構成が大きく変わり、今50歳前後の職員が部長職を占めていくことになるでしょう。
その部長職に上がった職員の後を、今若手の課長補佐らの中から上がる職員が流れ込んでいくということになりますと、市のトップとしても、世代構成が激変するここ10年の行政を担う人材をきちっと育てていかなければならないと思っています。
もともと行政は封建的といいますか、年功序列といいますか、例えば、民間ではヘッドハンティングもありますし、少々能力があれば追い越すということもありますが、自治体では、上からのひっぱりがなければ上がっていけないとか、年功序列であるとか、往々にしてありますからね。
そういったことから脱却するためには、当然、能力主義をもっと発揮できる組織でなければならないし、若い世代を押し上げていくためには、そこに持ってくる人材を育てていくというのが非常に大切だと思っています。

石原:私は、ここ数年、行政評価のあり方をはじめ、これからの市政について市民の意見を色々と聞き、考える「やお未来創造会議」という会議の座長をさせていただいていますが、その経験を踏まえて思いますのは、八尾市民の方は、関西人だからというのではないですが(笑い)、色々と活発に発言される方が本当に多いんです。
普通、役所の立場からすれば、あまり市民にあれやこれやと言われるとどうしても縮こまる風土もあるかと思いますが、どっこい八尾市の職員は、 明るく、ユニークな方が非常に多いですね。
能力、専門的知識もある、その一方で、ユーモアいっぱいな職員が多い。そのあたりは地域の特性もあるかも分かりませんが、よその自治体では静かな感じがするところも多いです。そこらの力を引き上げていける工夫があればいいですね。

市長:石原先生のお話にもありましたが、八尾の市民の皆さん方は非常に元気がありますし、よく色んな意見を言ってくれます。僕は、これからのまちづくりはやはり『人』だと思っています。市の職員だけでなく、地域のいろんな人材にもマンパワーを発揮していただきたいと思っています。そうすることで、おもしろい八尾市ができていくと思っています。そのためにも、信頼される職員とそれを活かす組織を作っていかねばと思っています。

石原:ところで、田中市長は行革を進めるための組織として庁内に行政改革室を立ち上げられるとお伺いしていますが。

市長:はい、私のマニフェストに掲げる行財政改革を推進する庁内体制として行政改革室を設置し、それに加えて、全庁的な改革を推し進めるため、各部に1名ずつ、課長補佐クラスの改革推進員を置き、また各課にも課内の推進員を配置して、総勢100名の体制を組みます。
これまで私自らが職員らとの意見交流を図るため、幾度となく行革についての会議をしておりますが、職員をまずは信頼し、各課から色んな改革案が出てくることを大いに期待しています。「1000ぐらいは出てくるやろう?」と言いましたら、職員はびっくりしていましたけど。(笑)

石原:兼務とはいえ、職員100人体制というのは、新しい取り組みですね。もちろん田中市長であれば、これまでたくさんの行政経験をお持ちですから、本来職員に聞かなくてもやろと思えばできると思うんですが、むしろ職員の話を色々聞くと。これは非常に良いことだと思います。
私たちの業界でコンサルティング をする際もそうなんです。いくら本を読んだり、他のところで経験して知識を持っている人がいても、やはり長年、現場に直接関わっている人には、非常にたくさんの情報なり、ネットワークなり、方策を持っている強みがありますよね。それらの人からもきちんと話を聞いた上で、じゃあどうしたらいいかという改善・ 改革の提案をするのが、ある種のコンサルティングの手法で、コンサルタントと言えども、もちろん自分だけでは全部対応できませんから、分からないことにつ いてはヒアリングをするというのが基本です。田中市長の手法は、まさにそういう感じがします。
100人の職員にまずいっぺん意見を出させてみようと、そしてそれを集約し、判断していこうというアプローチですね。

市長:市には2,000人を超す職員がいます。石原先生がおっしゃるように、職員がこれまで培ってきた知恵やネットワークはすごい財産だと思っています。 それらを僕がうまく後押しをし、一工夫して、再度、改革のために使わない手はないと思います。
八尾市の一般会計ベースで年間850億円も予算を使っている中で、もし問題点が100ぐらいしかないとなれば、それはおかしいと思っているんです。

石原:今、職員の持つ財産の話がでましたが、八尾市役所の職員全員が持っている強みは何かと考えますと、民間とは異なって、職員がやっている仕事は日本全国の市役所でも必ずやっています。
例えば、八尾市が課題を抱えて前に進まないときに、その課題をすでに解決している先進的な自治体を見つけ、そこに聞けば教えてくれますし、資料もくれる。場合によれば研修までしてくれる。これは民間企業間の関係ではありえないですね。
自治体間では、他市がやってきたことを素直に認め、自分もそれをキャッチアップして知恵を共有し、追いついていこうということができる。
企業では「競争」ですが、自治体は多分「共鳴」なんですよね。自治体の強みは、互いに先進事例を共有し、共鳴しあえることにあると思っています。
この「共鳴」をできるだけ表舞台に出そうということで、各地の自治体でやっておりますのは、大阪市でしたら「カイゼン甲子園」、横浜だったら「ハマリバ収穫祭」、名古屋だったら「なごやカップ」、尼崎市の「YAAるぞカップ」といった全庁的な業務改善・改革を100とか1000とかの単位でするわけです。
そして、それぞれの職場でできた様々な改善の中で、例えば1000ある改善の中で、30ぐらいびっくりするほどの良いものがあったら、それをみんなで共有 しようということで、年に1回ですが、午後半日を使い改善報告会をやっているんです。
八尾市でも、「かわっちゃお運動」という名前で、7~8年前から取り 組んでおられますが、なぜか、なかなか花が開かないんです。

市長:そのことについても、庁内で最近、議論をしました。行政では、せっかく良い提案が出ても、そのときの制度や法律などの壁があり、それを乗り越えられないとして、すぐにお蔵入りしてしまっている。
確かにそのときはそうかも知れませんが、今はできるかもしれない。その視点で、もう一回、過去の提案を引っ張り出すように指示しています。後は、それをトップがどう判断するかということです。職員を勇気づけ、押してあげないとなかなか乗り越えられないと思って います。
まずは、ボトムアップでいきたいと思っていますので、職員には、どんどん良いアイデアを出して欲しいんです。

石原:ボトムアップをスムーズにするには、市役所の職員さんにもどんどん色々なネットワークを広げていただきたいですね。そうした視点をもった職員をどんどん作るということが組織の改革にはとても大切です。
先にもお話しました「共鳴」という話は、横の人を認める、前の人を認め教えてもらう、教えてほしいと言われたら教える。この考え方を大切にしています。職員の方が、市民の方や他の自治体の方とたくさんのネットワークをつくるとともに、庁内でも職員同士の 協働参画を進めていく、つまり色々な場所で「共鳴」できるかどうかが重要であると考えています。庁内組織をうまく活性化すれば、八尾市は本当に良い自治体になると思っています。

市長:「共鳴」という話は、今後の行革を進める上でとても参考になりました。これから行財政改革を進めていく中で、職員にも非常にがんばってもらわないと いけない。
それに加えて、市が今、何をしているかを、市民の方にうまく伝えていくことも必要だと思っています。その点では、八尾市はそうしたアピールがまだまだ下手なのかなという思いがしています。
石原先生は、これまで自治体の事務事業の内容をわかりやすく説明する行政評価や市民評価の推進に取り組んでおられますが、行革との関係ではどのようにお考えですか。

石原:行財政改革を進めていくと、中身によっては当然市民の方にも痛みが伴う場合もでてきます。そのことを理解してもらうためには、市の行っている事業の進捗やそれにかかるコスト、必要度合いについて、市民の方が客観的に見ることができる仕組みが必要です。
八尾市でも、市の事業内容を対外的に説明するため 行政評価の取り組みが進められていますし、私が座長を務めさせていただいている「やお未来創造会議」でも、市民にとってわかりやすい評価の仕組みについて議論をしているところですが、そうした客観的な指標なり目標を設定することは、行革を考える上でも重要な意味を持ちます。
それと、これは私のもともとの専門分野にもなりますが、たゆみなく改革を進めるためには、自治体の監査機能を強化することも必要では考えています。これからの首長さんには、マニフェストを作ったりして、いわゆる攻めの行政運営が求められてきます。それを着実にかつ大胆に進もうと思えば、地味には写りますが、やはりあの手この手できちんと 事業を監査できる仕組みをつくることがとても大切だと思っています。
その点、八尾市の場合は、特例市とはいえ任意の設置になる包括外部監査制度を早くに条例で定め、導入しておられますので、他市よりも一歩、進んでいると見ています。この外部監査制度では、市の事業に外部の目が入る訳ですから、本来その事業 への指摘について市が速やかに改善を行うことになります。
しかし、外部監査人が取り扱うテーマや視点によっては、なかなかうまく事が進まないこともあり、 あえて、注文をつけるとしたら、八尾市がこの外部監査制度を充実させて、うまく行革につなげていって欲しいといったところでしょうか。
ようは、お金のない時代、公の事業の目標なり、必要性なり、今の現状なりを、色々な視点で評価でき、また改革できる工夫がこれからの自治体改革のキーポイントになってくると 思っています。

市長:私自身も目標を色々と立てるんですが、僕の手帳には、例えば「市長になる」と書いてあります。これはもう何年も前から書いています。英語を覚えると か、たばこをやめようとか、大体50ぐらいの目標を書いています。それは、すぐにできるものもあれば、5年先、10年先と時間がかかるものもある。
しかし、必ずやり遂げるという意志が必要で、改革にもそうした目標設定が必要だと考えています。
八尾市では、今後、800の事務事業、あるいは施策で言ったら 600の施策を全部点検するとしています。僕の与えられた任期の中で、いかに改善できるか。数値目標や市民の方の満足度みたいなものを追求していきたいと思っています。
行政が先ず変わり、そして市民が変わる。そうすれば八尾の街も変わっていく。それを信じて今後とも市政運営をしたいと思っています。石原先生には、今後も引き続き、行政経営アドバイザーをはじめ本市の行政運営と行財政改革にお力をお貸しいただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

両者:今日は、長時間どうもありがとうございました。
元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~(関西学院大学専門職大学院 教授 石原 俊彦さん)写真

平成19年6月26日

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