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近畿大学理工学部 教授 久 隆浩さんに聴く

[2008年8月8日]

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~(近畿大学理工学部 教授 久 隆浩さん)写真

今回のまちづくり達人
 近畿大学理工学部
 教 授 久 隆浩(ひさ たかひろ)さん

<久 隆浩(ひさ たかひろ)氏プロフィール>
 工学博士。本市の地域経営アドバイザーを務める。総合計画審議会委員をはじめ、「まちづくり基本条例を考える会」の座長など、数多くの会議に参画。各市で協働型のまちづくりに取り組む。

テーマ『市民との協働』

市長:今日はお忙しい中、久先生にお越しいただきましてどうもありがとうございます。久先生とは市民活動の場面で、色々とお付き合いがあったのですが、こうしてゆっくりとお話をさせていただく機会というのが、なかなかありませんでした。今日は、ぜひ、『市民との協働』というテーマで、色んなことをお聞かせいただければと思っています。

久 :こちらこそ、よろしくお願いします。これまで、私自身も八尾市をはじめ、色々な自治体で市民活動や市民会議に参画し、多くの市民の方々とお付き合いをしてきておりますので、今日、お話することが八尾市のご参考になれば幸いです。

市長:久先生は、これまで多くの市民の方々と接してきておられますが、「まちづくり」に対する市民の意識について、どう見ておられますか。

久 :そうですね。これは八 尾市に限らずですが、様々な地域で市民の方々とお付き合いしたり、また市役所の職員と仕事をさせていただく中で、今、困った状況がどんどん増えてきているのではと思っています。
「市民参加」という機会がどんどん増えてくることは良いことなんですが、自分の意見を通すことが「市民参加」だという人が増えてき ているのが気になるんですね。「市民の意見だ」と言いつつ、実は自分の意見でしかないと。自分の意見が通るか、通らないかで、「これは良かった」とか、 「市民参加じゃない」とか、そういう判断をする人が増えていることが一つ気になっているところです。
それは、実はコミュニティが希薄になってきていること に関係しているのではないかと思っています。人頼り、市役所頼りという人たちがどんどん増えてきて、文句だけ、自分の意見だけ言えば、「誰かがやってくれ るだろう」というような風潮が、出てきているのでないかと思っています。
そうした風潮を変え、自分も動いて地域を変えようとするいわゆる自律的に自分たちで問題を解決していく人を増やしていかないと、人頼み、人頼りということだけでは、なかなか問題は解決できません。私の今の仕事の多くも、自分から動ける人をどういう形で増やしていけるかと、色んな仕掛けをさせてもらっています。

市長: 今、久先生が言われたように、これからのまちづくりを考えた場合、「市民参画」、あるいは「市民との協働」はとても大事な、そしてひとつの大きなキーワー ドだと思っています。
市民活動については、久先生に本市でご尽力をいただいていることもあり、前進をしている部分もたくさんあって、相当、八尾市では定着 をしてきたという思いを持っています。
久先生のお話にもありましたが、市民生活が時代の流れとともに多様化して、市民の意識が本当に千差万別になってきて いると感じています。我田引水的に自分とこの地域だけに、あるいは自分だけにと個人的利益につながるような発言も一方では非常に多くなってきている。
しか し、一方では、どこかおかしいなと思っていただいていることを率直で建設的に言うてくれはる市民も多いと思っているんですね。街の中で声を聴くと、「コ ミュニティバスが走っているけど、人があまり乗っていないし無駄ですよ」とか、「指定ごみ袋もようさん余っているので工夫したら減らせるのでは」とか、 「地域のコミュニティセンターで講座を色々やっているけど、エレベーターがないから2階まで行きにくくて」とか、色んな素直な意見をいただきます。
また、 地域の清掃とか、あるいは一戸一灯運動とかのように、もし良かったら市民と企業と行政とが一緒になってやりましょうと。そうして、一つ一つの行政課題をと らまえながら、できることとできないこと、あるいは一緒になって協力することを考えながら、解決できることもまだまだたくさんあるのではと思っています。

久 :ただ、行政の職員が動 けばよいかというのは、なかなかデリケートというか、微妙なものがあります。行政が出過ぎると市民の主体性というのが損なわれるし、逆に何もやらなければ 動かない。そのタイミングやバランスが問題ですね。
今、気付きを促す手法として、ファシリテーション、ファシリテーターが注目されています。まさしくファ シリテーターとしての役割を市役所職員がどう担っていけばよいのかということだと思うんですね。
たとえば、地域での情報交換の場ともいうべきラウンドテー ブルで見れば、東山本地区では立ち上がって、もう6年目を迎えてしっかりとやられているんですが、なかなか他の地域が立ち上がりそうで立ち上がらないという話があります。市役所が主導して一斉に29小学校区でやれといったら、ある意味、やれないことはないと思うんです。
しかし、そうなったときには、市民側からすればいつものように「市役所が言ってきたからやった」みたいなことになって、何か問題が起きた時には市が責任を取れという話になりかねない。かといって放っておいたら、なかなか立ち上がらない。そうすると、どういう形で市が働きかけ、地域の資源なり、人材なりをうまくつないでいくのか、考えていかなければならない。
八尾はどこでもすばらしい地域力を持っています。地域の力をもう一段階、二段階引き上げていくために、ある意味、市役所は黒子になりながら、なおかつ、うまく地域の人材をつなげる仕掛けをさせてもらえるように、今までの提案の出し方と違う出し方というか、タイミングを考えていかなければならないのではと感じています。そうした仕掛けの輪が市全体に広がれば、八尾の資源である地域力の可能性が非常に高くなるんじゃないかと思っています。

久  :実は「まちづくりラウンドテーブル」は八尾が発祥なんですが、他地域で大きく発展していっています。
ラウンドテーブルに限らず、発祥地から伝播したところの方がおもしろい展開になっていくというケースがよくあります。東山本地区のラウンドテーブルにも他市から多くの皆さんが見学にこられて、そこでヒントを得てがんばっているところがいくつも出始めています。
その中で一番市役所がうまく仕掛けをして面白いと思っているのは箕面市ですね。箕面市では4つの地域で立ち上がっています。箕面市は、実は何十年という積み重ねの仕掛けがあるんです。昭和40年代後半から50年代にかけて、八尾市でもコミュニティセン ター(コミセン)を設置していった時代に、箕面市でも各小学校区ごとにコミセンを設置していきました。
その結果、小学校区単位で集まる拠点として13小学校区すべてにコミセンがあり、そしてコミセンを担うための運営委員会がそれぞれにできています。これがラウンドテーブルを動かす際に非常に有効に機能しま した。
箕面市ではコミュニティ会議と呼んでいますが、それを呼びかけるのがコミセンの運営委員会なんです。コミュニティ会議設置の呼びかけのために説明会をしたときに、コミセンの運営委員会がラウンドテーブルを動かすんですよと声をかけたのですが、「何でコミセンの運営委員会なんだ」と疑問の声が上がりました。 自治振興委員会の仕事ではないのかという話が出てきたんですけれども、「ラウンドテーブルというのは集まる場所で、組織ではないので、連合自治会や自治振興委員会ではないほうがいい」と説明しました。
集まる場所としてのコミセンを管理しているのは誰ですか、運営委員会でしょうとお話しました。コミセンの運営委員会がコミセンの行事として月 1回、みんなに集まる場所を提供してくれるという役割を担ったらいいんじゃないですかということになり、コミセンの運営委員会が中心にコミュニティ会議が運営されています。
また、コミセンだけだったら人集めに限界があるので、やはり福祉委員会にも声をかけている。福祉委員会はもともとネットワーク組織ですから、福祉委員会に声をかけたら自治振興委員も来るんですよ。地域のいろんな方を福祉委員会が声をかけることによってつながっていく。
さらに、若い人たちを巻き込もうということで、八尾でいうと青少年指導員会ですね。箕面では青少年を守る会というんですけれども、青少年指導員のグループにも声をかける。母体としてはコミセンの運営委員会ですけれども、そこにネットワーク組織としての福祉委員会と若手の中心としての青少年指導員会と、この3者に声をかけてう まく立ち上げられたんですね。
こうした状況で八尾を見たときに、八尾ではコミセンの運営委員会に相当するようなものが小学校区ごとに均等にできているかと いうと、そこが弱い気がするんですね。

市長:コミュニティのことを考えると、中学校区になるのか、小学校区になるのか、そこはまだまだ色々と議論をする必要がありますが、やはりより狭い範疇でいうと小学校区単位のコミュニティを充実していくのがいいのかなと思っています。
久先生が今おっしゃったように、本当に各地域でコミセンのようなものがあったらよいのかなというふうに思っています。
もう一方では、10ヵ所ある出張所の機能をもうちょっと強化をしながら、そこから職員が地域に出て行けるような仕組みを作ったらどうかななんて、そんなことを色々と考えています。
八尾市では、小学校が29、中学校が15ありますので、そこで何かおもしろい取り組みを展開し、地域コミュニ ティをうまく形成していきたいなと思っています。そのためにも、今、八尾市にある財産をフルに活用し、たとえば集会所とかコミセンなど、市民が集まる場所というのは、あればあるでいろいろと利用していただけますので、やはり久先生がおっしゃられた核が僕もいると思います。そして、その核は、市民の方と職員とで色々議論をしてつくりあげていくというものが良いですね。

久 :田中市長のお話にありました小学校区を活用している例は大阪市にもあります。大阪市では生涯学習ルームがすべての小学校にあります。生涯学習ルームは、名前のとおり、生涯学習の拠点ですが、小学校を活用したモデルとしては非常に面白くて、生涯学習推進員というコミセンの運営委員みたいな役割の方々が運営に携わっています。
八尾でもそうですが、すべての小学校区に必ずあるのは小学校です。学校の施設内にある余裕教室をみんなの集まる拠点にして、それを管理するグループをつくり、 そこがラウンドテーブルの仕掛け人になっていくというのもありかなという気もします。
いずれにせよ、小学校区ごとにある集会所なり、コミセンなり、余裕教室なりを活用し、そこを運営する市民組織が主体となって、井戸端会議のように地域の人同士が自由に情報交流できる場を提供し、そこで地域課題や人材を発掘するという訳です。

市長: そして、そうしたコミュニティの場にもっと職員が出ていき、率直に議論し、市民の意見を吸い上げる。市民と一緒になってまちづくりを考えることが、これからの行政には大切なことなんでしょうね。
八尾には長年培われてきた地域力に力強さがありますし、協働のまちづくりを進めるためには行政が説明責任を果たすことも必要で、職員がもっと市民の中に出て行き、一緒になって考えていく必要があると僕は思っています。

久  :現実として、まだまだ職員が地域の中に飛び込めないと考えている理由が実はあります。会議の場に職員が顔を出したら、すぐに要望大会になってしまうん じゃないかという話があると思うんです。
けれど、私もラウンドテーブルに長年関わらせてもらっている経験からすると、決してそんなことはない。逆に、市民 と行政がタイアップしたらどうなるのかという建設的な話にもなります。
たとえば、交通基本計画を作ったときに、懇談会を少くとも年に1回やりましょうとい う話があったんです。そのとき交通問題には違法駐車問題とか色々と解決が難しい、やっかいな問題が多くあるので、要望大会になったらどうしようかという話になったんですね。
しかし、いざふたを開けてみると、みんな前向きな議論になって、最初、文句を言いに来た人でさえ、今日はやめとくわと言って帰られたんです。
このことは、交流の場の雰囲気の作り方次第で、要望大会になったり、そうでなくなったりするというまさにわかりやすい例だと思います。
住民と職員がフランクに意見交換できるこうした場所をもっともっと作ることで、お互いが協働のまちづくりに慣れて行くという可能性があると思っています。

市長:加えて言うと、市民の立場に立ってどうなんかという議論が庁内からもっともっと出てくれば、職員も楽しく仕事ができると思っているんですね。基本的に仕事は楽しく、地域の人とも色んなダベリングもしながら、楽しくするのがいいと僕は思うんです。

久 :ラウンドテーブルとか 地域経営を動かしていくためには、職員の意識改革とか働き方の改革が必要です。従来型の組織で従来型の働き方をする中では、なかなか地域経営につながって いかないと思います。
八尾市の職員は、若手も含めて非常にレベルが高いと思いますが、市民との協働に向けて市役所の雰囲気をどうつくっていくのかはとても大事なことだと思います。
一方、市民の方でも、八尾の市民活動のレベルは高く、活動に関わっている人たちがたくさんおられる中で、さらにどういう仕掛けで、それを「地域力」につなげていけるかが重要なポイントであると考えています。
そのためには、やはり市の支援が必要です。市民グループにうまく元気アッ プしてもらう、そのための拠点や仕掛けを、市の支援でどう構築していくのか。これからまさしく支援の時代だと思います。
今まで市役所というのは「推進」を してきました。○○推進課という名前の部署がたくさんありました。自分たちが税金を使って推進をしていくのではなくて、これからはいろんなところで市民を 「支援」していくことが求められます。
部署の名前としても○○支援課という名前の課がもっとあってもいいし、まさしく支援をする役割が非常に重要になって くると思います。
情報交流の場に、職員がどんどん出ていき、市の持つ情報を積極的に伝える。そして、市民と職員が同じ立場で交流を深める中で、地域の課題について情報を共有し、互いに協働して問題解決を図ることにつなげる。そんな可能性があるのではと考えています。

市長:「支援」、まさしくそうですね。はっきり言って、これだけ行政ニーズが、日々多様化する中では、市ですべてを推進することは大変しんどいことです。
「市民のマンパワー」とか 「市民力」と、「行政」の力を合わさないと、これからの市政運営は成り立っていかないと感じています。
行政に、あるいは地域に興味を持っている人、あるい はテーマ型活動で興味を持っている人は、いっぱいおられます。そういう人たちの力をいっぱい集めながら、本当にすばらしい八尾のまちを作っていきたいと考 えています。
地域ぐるみでまちづくりを支えていただくといった「市民力」を拝借しながら、行政もそれに対して支援することで、課題ごとに解決する。そう いった市民との協働というのが、本当に必要だと思っています。

久 :そのとおりですね。私は、八尾の地域の方々とこの10年来、お付き合いさせていただいていますが、八尾はどの地域でもすばらしい地域力を持っておられます。
だからそういう意味でも、先ほども申し上げましたとおり、八尾の可能性というのは非常に高いと思うんです。
先ほどのラウンドテーブルの当初の話にもどして言うと、地域力が一定のレベルまでいっているだけに、そこにプラスアルファをするという話を持っていくには、戦略もいるし、知恵もいりますよね。

市長:市民と職員が一緒になって、八尾のまちづくりの勉強をしようというのはどうでしょう。まちづくりの色んなノウハウを市民と職員が一緒になって学ぶ。
たとえば、学校教育の中 で、先生と保護者、職員も一緒になって専門家の話に耳を傾けるというのは、僕はありだと思うんです。
もっともっと市民と職員が親近感を感じ、あるいはその問題点を解決するにあたり、行政が説明するのではなくて、一緒の思いで並ぶことによって、保護者はこうしないとあかんし、地域はこうせなあかん、学校の先生はこうせなあかんというふうに、それぞれが互いに気付いていける場があれば、もっと面白いものになるのと違うかなと思います。

久 :私が思っている地域経営というのは、地域の資源を活用しながら、協働してマネジメントしていくということなんです。そういう意味ではラウンドテーブルは一つの大きな重要な仕掛けであるけれども、地域全体、市役所全体で連携していかないと、本当の意味での地域経営はできないと思っています。市民と行政がいかにして、地域の資源を 切り盛りしていくか。その仕組みづくりが大切ですね。

市長:そのとおりですね。新しい発想で今の行政を動かさないと、今までこうやってきたからみたいな旧来型の考え方では、もう動かない時代やと僕も思っています。
本当に久先生がおっしゃるように、21世紀型の行政のあり方を追求していかなければ、面白くないし、僕は税金をいただいている市民の方に対して申し訳ないと思っています。
市民力というか、市民と協働しないと今の行政はまわらない。僕はそう思っています。久先生からご教示いただいたことを参考にしながら、面白い八尾市にしていきたいと思っていますので、今後とも、色々とアドバイスをお願いいたします。

久 :こちらこそ、今日はありがとうございました。私も八尾市民の方々と一緒になって、今後とも色々なまちづくり活動を支援していきたいと思っています。

市長ありがとうございました。

元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~(近畿大学理工学部 教授 久 隆浩さん)写真

平成19年8月8日

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