元気八尾再生~まちづくり達人に聴く~
様々な場面でご活躍の方々との対談を通して、たくさんの刺激を頂戴しながら、新しい八尾を創造してまいりたいと考えております。
今回のまちづくり達人
映画監督・俳優
塩屋 俊(しおや とし)さん
<塩屋 俊(しおや とし)氏プロフィール>
俳優としてテレビドラマや映画に幅広く出演するかたわら、新人俳優などの育成にも力を入れている。ほかに、平成20年開催のおおいた国体で総合演出を務める。
また、映画監督として数々の作品を手がけ、平成19年には、息子を交通事故で亡くした母親の闘いを描いた映画「0(ゼロ)からの風」を制作。安全なまちの在り方を社会に問いかけた。
■映画「0(ゼロ)からの風」
最愛の夫に先立たれ、一人息子の零と暮らす圭子。二人に突然、悲劇が起きる。大学に入学したばかりの零(れい)が自動車にはねられ死んでしまったのだ。加害者は飲酒運転で無免許、再犯。
しかし、下された判決はわずか5年の懲役だった。圭子は刑法の厳罰化に向けて立ち上がる。自分と同じ悲しみを背負う人を一人
でも増やさないために。零の命をつなげていくために。
この映画は、交通事故で息子を亡くされた鈴木共子さんをモデルに描かれています。鈴木さんは同じ思いを抱く仲間とともに街頭に立って刑法改正を訴え、約37万人の署名を集め、一般市民による初めての法改正「危険運転致死傷罪」の新設を成し遂げました。
さらに鈴木さんは、息子の人生を代わりに生きようと、息子の使っていた教科書とノートをたどって受験勉強をし、息子が通った早稲田大学に入学。平成19年3月に卒業されました。
大きな社会問題になった自動車の危険運転の撲滅を題材にした映画「0(ゼロ)からの風」を制作した映画監督の塩屋俊さんと田中市長がまちづくりについて意見を交わしました。
八尾のまちに息づく「地域力」
市長:ようこそ八尾市にお越しくださいました。今日は、それぞれ地域の人が努力して残してきた八尾の財産である心合寺山古墳や久宝寺寺内町、文化会館などを一緒に巡りましたが、どのような印象を持たれましたか。
塩屋:八尾市を訪れてみて、静かな中にも息づいている市民の熱気みたいなものが感じられ、素晴らしいと思いました。八尾の人間力、言い換えれば「地域力」がそこにしっかりと根づいているのでしょうね。
市長:
その地域力が八尾の強みですね。八尾では古くから、「自分たちのまちは自分たちで守る」という自治の精神が育まれてきました。また、人と人とのつながりを大切にしながら助け合って暮らしてきました。そのような土壌で培われてきた地域力を、より高めていくことで、まちづくりに生かしていきたいと考えています。
例えば、市民の安全を守るということでは、行政や警察だけではなく、市民や企業も一緒になって地域全体で取り組んでいく。地域力というものが、そこでは非常に重要になってくるのです。
塩屋:そんなふうに、その土地が持っている強みや個性というようなものをしっかりと見極めてまちづくりを捉えていくことは、とても大切なことですね。
映画を通して伝えたいこと
市長:私は、まちづくりにおいても人の心に訴えかけることが重要だと思っています。塩屋さんは危険運転の撲滅を訴える映画を制作し、人の心に一石を投じられましたが、そのきっかけを聞かせていただけますか。
塩屋:映画のモデルである鈴木共子さんは署名を集めて法律を変えました。僕はその母親の行動の原動力になった子どもへの愛情の底知れぬ深さを感じたとき、日本中に
いるお父さんやお母さんは、自分の子どものことをそれほど愛しているんだろうなと思いました。鈴木さんがスーパーお母さんであるというヒーロー像ではなく、単に息子のことをこんなに愛しているんだということがピュアに伝わればと思ったんです。
市長:今回、こういう映画をつくられたことは、社会に訴えかけ、もう一度考えてほしいと促すことであり、大きな意味を持っていますね。
塩屋:この映画は、警察や教育委員会、企業などで趣旨を理解していただいて貸切上映されるなど、毎週全国のどこかで上映会が行われています。でも、もっとこれを浸透させていかなければいけません。危険運転の撲滅というテーマはブームに終わらせる話ではないですから。
「安全」を一人ひとりの意識の中に刷り込んでいく
市長:安全・安心なまちづく
りの取り組みでも同じことが言えますね。
例えば、本市では「ひったくり」が非常に多く、これを撲滅して市民の安全や財産を守るという視点からいうと、もっと努力が必要です。「前カゴからひったくられますよ。きちんとカバーを付けてくださいよ」と啓発していますが、ひったくり防止カバーを付けている人はまだ2割もいない。安全に対する意識を1人でも多くの人に持っていただき、犯罪から身を守るための手立てを自ら努力してもらうこと、さらにまたその人から広げ
ていく末広がりの運動が求められます。
塩屋:映画というのは、普通、公開されたら制作チームの責任は終わりますが、この映画は全然終わらない。定期的に上映して、意識の中に刷り込んでいく種類の映画だからです。「安全」への意識も一人ひとりの意識を変えることから、次第にまち全体に広がってほしいですね。
八尾らしいストーリーを描く
市長:まちづくりも映画づくりも、まずストーリーが大切だと思いますが、塩屋さんから見た八尾はどんなまちですか。
塩屋:一言で表すと「可能性のまち」ですね。歴史ある古墳群や寺内町といった非常に根源的な、人間がそこに息づいていたという事実と、一方、現代的な、文化会館や
にぎわいある商業などがある。古いものと新しいものが入り交じって醸し出す可能性を感じます。八尾のまちを歩いていて、映画を1本つくりたくなりました。八尾で撮影して、八尾のオリジナル映画をつくり、素晴らしいホールがある文化会館で上映できればいいですね。
市長:うれしいですね。私は、昔から脈々と流れてきた歴史があり、現在があり、そして未来へとつながっていく、八尾らしいまちづくりのストーリーを、これからも市民の皆さんと一緒に描いていきたい。その先には必ず夢や希望にあふれた本当に楽しい八尾のまちがあるはずです。
塩屋:こちらこそ、今日はありがとうございました。私も八尾市民の方々と一緒になって、今後とも色々なまちづくり活動を支援していきたいと思っています。
市長:市民の皆さんと協力しながら、もっともっと元気な八尾を築くための取り組みを進めていきます。塩屋さんは、多くの人の心に訴えかけ、夢や希望を与える映画づくりにこれからも頑張ってください。本日はありがとうございました。