市制施行60周年記念対談~俳優・文芸評論家 児玉 清さん~
昭和9年1月1日東京都生まれ。昭和33年、学習院大学文学部ドイツ文学科卒業。NHK大河ドラマなどテレビドラマに多数出演。クイズ番組の司会としても活躍する一方、エッセイやコラムの連載、海外小説の文庫解説など書評家としても活躍。著書に「寝ても覚めても本の虫」「たったひとつの贈りもの」「負けるのは美しく」がある。
知恵と創造力 ~元気で新しい八尾づくり~
八尾市制施行60周年記念式典が、4月12日、文化会館で開催されました。記念講演会では、俳優・文芸評論家の児玉清さんをお招きし、「知恵と創造力~元気で新しい八尾づくり~」をテーマに講演していただきました。児玉さんは、町並みを次代へ受け継ごうとするドイツ市民の姿やヨーロッパのまちの活性化など外国での多岐にわたる経験を交えながら、これからのまちづくりについて語られました。
講演終了後、児玉さんと田中市長が八尾のまちづくりについて意見を交わしました。
■対談内容
市長:本日はお忙しいところ、八尾市制施行60周年記念式典でご講演いただきありがとうございました。
児玉:こちらこそ八尾市の節目の年にお招きいただきまして大変光栄です。大阪にはテレビ番組の収録で30数年通っており、八尾市にも親戚が住んでいて、飛行機から「八尾はどの辺りかな」といつも見ていました。
市長:市内に前方後円墳があったり、八尾空港の滑走路があったりして、空からでも八尾市は案外目立つんですよね。
国の史跡指定を受けている心合寺山古墳や高安古墳群などが市街地のすぐそばにあり、また高安山など四季折々に織りなす自然の風景も豊かです。そして、特に夏には市内のあちらこちらで「河内音頭」の一節が聞こえてくるような風情のあるまちです。多くの人に訪ねていただきたいです。
児玉:八尾市には空港などの近代施設のほか、美しい自然や古くから延々とつながった歴史遺産が数多く残されていて、それが大きな財産ですね。
●国際化と個性の時代
市長:講演会では、「知恵と創造力~元気で新しい八尾づくり~」ということでお話いただきました。その中で、ますます国際化が進む社会において、これからのまちづくりには個性を際立たせることが必要だというお話がありましたが。
児玉:今や地球上のどこに住む人間も、国際化の波にさらされています。これよって、まちの画一化が進んでいます。かつてはそれぞれのまちに特性があったのに、今ではみんな同じになってしまっています。そういう中で、何としてでもユニークなものを創り出し、個性を際立たせていかなくてはならないと思います。ある経済学者が著書の中で、これからの社会においては、会社も個人も「差異性」を際立たせなければ勝ち抜くことはできない、と言っています。
これはまちづくりにも言えることで、まちがこれからどういう形でその特性を生かしていくのかということが、市政にも、そしてわたしたち市民にも問われているのではないでしょうか。
市長;国際化時代だからこそ、「八尾らしさ」が求められるということですね。
●八尾らしさを求めて
児玉:40数年前に初めてドイツを訪れたとき、ヴュルツブルグのまちはレンガ造りの建物が並び、中世さながらの景色が眼前にありました。しかしこの町並みは爆撃でがれきと化したものを建て直したものでした。ドイツ人は「景色は財産であり、祖先から引き継いできた風景を次の時代までちゃんとつなげていかなければならない」と言うんですね。これがヨーロッパのまちづくりの概念なんです。
市長:ヨーロッパは石の文化というイメージがあります。200年、300年という非常に長い年月にわたって昔ながらの景観を守り続けていく姿勢はとても参考になります。
八尾市でも、歴史に親しんでもらおうと中河内最大の前方後円墳である心合寺山古墳を復元整備しました。古墳の上に埴輪の複製を並べ、古墳の斜面の葺石も、古墳が造られた当時と同じように一つひとつ、人の手で葺いて復元しました。自然に囲まれた環境の中で四季を感じながら歴史を体感できる場となっています。
児玉:千数百年の時を超えて残された歴史遺産をただ守り受け継いでいくだけでなく、学習の場、憩いの場として生かしているのは良いことですね。
市長:また、400年以上の歴史を持つ久宝寺寺内町は、道路整備や環濠整備などの保全整備を行い、歴史的な町並みを残しています。
児玉:久宝寺寺内町は私も訪れましたが、落ち着いた風情が残っている。こういう八尾市独特の景観を今後も守っていってほしいですね。私の好きな作家が「風景とはそこに住む人間の心を映し出す鏡だ」と言っています。
市長:そうですね。これからも、古いものと新しいものの調和のとれたまちづくりをしていきます。
●「地域力」を生かす
児玉:先ほどの記念式典で表彰を受けられている様子を拝見させていただきましたが、多岐にわたる分野で数多くの方々が活躍していらっしゃることに驚きました。
市長:市内には青少年教育、地域の安全安心、高齢者の支援活動、自然環境保全活動など、いろいろな活動をされている方がたくさんいらっしゃいます。まちづくりの推進には市民の皆さんの力「地域力」が重要ですが、八尾市は市民の皆さんに支えられてこの60年間続いてきたんだとあらためて認識しました。今後も市民活動と連携しながら、まちの活性化を図っていきたいと考えています。
児玉:一人ひとりの力も必要ですが、地域全体としての「地域力」も問われますよね。その点、八尾市は人情の厚いまちですから、長年培われた人と人とのつながり、地域のつながりといったものが強いのでしょうね。
市長:八尾の人たちは、地域の中で、お互いさま、おかげさまという気持ちで助け合ってきました。そういう意味で、「地域力」というものがしっかりと根づいていると言えると思います。
児玉:そして、大変風通しがいいと言いましょうか、皆さんが本音をぶつけ合いますよね。
市長:そうですね。市民の皆さんが自分たちのまちのことに関してどんどん意見を出し合い、さらに人と人とのネットワークをうまく生かして実現させていく仕組みをつくって、「地域力」をまちづくりの大きなパワーにしていきたいと考えています。
児玉:まさに、市制施行60周年のコンセプトにある「地域力で未来を拓くまち」というわけですね。
市長:そのとおりです。
●まちに賑わいを
児玉:まちの活性化で言えば、市内の商店や商店街が活気に満ち溢れた、賑わいのあるまちにしていただきたいですね。今、日本では商店街がどんどん減ってきています。わたしたち市民が、地元の商店街の店で買うようにすればいいのではないでしょうか。これをまちぐるみでやれば、まちは活性化できると思います。ヨーロッパではそのような取り組みがきちんと行われています。なぜならヨーロッパの人たちはこのことを知っているからです。
市長:私も、商店街はまちの顔の一つと考えています。その活性化のため、今年、実態調査を予定しています。商店街空き店舗の活用策を商工会議所と連携して検討を進めるほか、近隣大学との連携強化も模索していきます。
児玉:八尾ならでは、みたいなことができれば面白いですね。そういった「知恵と創造力」がまちづくりには欠かせないと思います。
●勇気を持って 変える
市長:講演の中で「勇気」という言葉がありました。市民も企業も行政も知恵と創造力を出し合いながら、八尾市ならではの取り組みを勇気を持って進めていこうと思っています。
児玉:何かを変える勇気を持たなくてはいけない。自分たちに何ができるかを考えながら、勇気を持って挑戦していただけたらと思います。
市長:そういうことを市民の皆さんにも再認識していただいて、地域でそれぞれの活動がまた新たに始まると八尾市はさらに発展できますね。
児玉:元気で新しいまちの実現のため、これからも八尾市が素晴らしいまちづくりを進めていかれることを期待しています。
市長:本日はありがとうございました。