[2024年3月26日]
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講師:市川秀之さん(滋賀県立大学教授・市史編集委員・民俗部会長)
民俗学は、伝統的な生活文化、衣食住とか年中行事とか、人の一生とかのお話を皆さん方からお聞きし、教えていただいて、それをいろいろ比較したり、歴史的に追究したりしていくものです。
日常的にしていることを「なんでこんなことをするのか」と言われて、「ずっとそうしているから」としか言いようがない。私たちの生活はそういうことばかりです。毎日していることは記録に残っていないし、残しません。このような当たり前のことを調べてみると非常に興味深いと思います。
2 市史の民俗編とは?
昔は市史に民俗編はありませんでした。関西の市史は、歴史志向、通史志向が強く、民俗編は、ここ10年くらいで出たものです。
八尾市でも、地域、地域で、その地域の民俗を調べている人はおられますが、市全域をまとまって調べたというものはありません。市史では、むかし70近くあった全集落を、年中行事を中心に聞き取りして、その中で特色のある地区を総合的に聞き取りする方針です。お祭りの調査も行います。八尾市独特の特色ある民俗として、造園業とか、歯ブラシ工業とかのほか、大阪市に近く都市化していますので、町場の民俗もテーマにして調べて行きます。ぜひ調査にご協力をお願いします。
3 服部川での民俗調査
山の方に丸い、小さい池がたくさんあります。田んぼに付いた、個人持ちの溜池は非常に珍しく、山沿いの、溜池の文化というのは、非常に大事なものだと思っています。
年中行事では、田んぼへのオレイマイリ(お礼参り)、山にお供えなどをするハツヤマ(初山)、あんこを入れたよもぎ餅を食べるハルゴト、ズイキの軸にわらを巻いて作ったエンマラで地面をたたく月見などがあります。他の地区の事例と合わせながら見ていくと、服部川の特色がよく分かってきます。皆さん方のお話をテキストにしながら、今後も調査を進めていきたいと考えています。
講師:藤井弘章さん(近畿大学准教授・民俗部会員)
民間信仰のグループとしての講がありました。伊勢講は、トヤ(当家)の家でサカキをあげ、掛け軸を床の間にかけて拝み、伊勢音頭を歌い、ご馳走で盛り上がりました。また、定期的に伊勢神宮(三重県)にメンバーで参詣しました。二月講は、東大寺(二月堂、奈良県)のお水取りにも行って、松明を持ちました。服部川では二月講のことをニイガッタンといいました。愛宕講は、愛宕山(愛宕神社、京都府)にお参りしました。柳谷講は、柳谷観音(楊谷寺、京都府)にお参りしました。
2 家の信仰
講を組んでお参りするのと、違うものもあります。大神神社(三輪山、奈良県)では、地鎮祭に撒く砂をもらいます。清荒神(清澄寺、兵庫県)では、台所に貼るお札をもらいます。近いところでは、信貴山(朝護孫子寺、奈良県)、石切神社(東大阪市)にお参りしました。八尾御坊(大信寺)では、昔は御逮夜に買い物に行きました。社寺参詣には、娯楽的な意味合いも含まれている場合があります。
3 修行としての登山
講ではありませんが、山岳霊場の大峰山(大峰山寺、奈良県)に先達に引率されてお参りしました。これを山上さん参りといいます。近畿地方では男子の成人儀礼として広まりました。お土産にシャクナゲの葉とダラスケ(陀羅尼助・漢方薬)を買うのが、河内・和泉の特徴です。シャクナゲの葉は、防虫剤としてたんすに入れました。シャクナゲを持ち帰るのは、素朴な山岳信仰で、山へ行った印であると同時に、山の神を集落に招く意味があったと思います。
4 服部川の社寺参詣の特徴
服部川は、農業関係などのつながりだけでなく、社寺参詣においても奈良方面とのつながりが深いことがうかがえます。東高野街道が通っていますが、和歌山方面とはあまりつながりがありません。京都方面とは、若干つながっているという印象があります。
現地調査報告会概要
歴史遺産の見方-八尾市域の民俗調査を通じて-
八尾市魅力創造部 市史編纂室
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