八尾市民が要介護になる原因疾患とは
健康寿命を延伸させるためには、要介護状態にならないことが最も大切です。そのためには、要介護の原因となる病気の予防を徹底しなくてはいけません。
今回、健康まちづくり科学センターにおいて、要介護の原因を明らかにする調査の一つとして、八尾市民における要介護認定時の主治医意見書をもとに、要介護の原因と医師が診断した病名を調べました。具体的には、2019年度に新規で「要支援または要介護」と認定された第一号被保険者(65歳以上)約3300名全員を対象として、主治医意見書の「傷病に関する意見」欄の診断名1~3を採録しました。
男性では生活習慣病と認知症、女性では関節疾患、骨折・転倒、認知症の割合が多い
診断不明例を除く男性1386人、女性1941人の主な原因疾患の内訳を表1に示します。(なお、診断名1~3に記載された病名を全て計上して対象者数に対する割合を算出しましたので、表中の各病名の割合を合計すると100%を超えています。)

要介護の原因疾患は、男性では、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、糖尿病といった生活習慣病と認知症が大きな割合を占めていました。特に、悪性新生物が28.9%と最も多かったことは注目すべきです。一般的に「悪性新生物(がん)」は命にかかわる病気ととらえられていますが、要介護の原因としても大きなウエイトを占めていることがわかりました。男性は女性より喫煙率が高く、また食生活の乱れや飲酒などの影響で悪性新生物の罹患率は女性よりも高いのですが、そうした性差も影響していると考えられます。
一方、女性では関節疾患と骨折・転倒の割合が大きく、合わせると49.3%と約半数を占め、次いで認知症が23.9%(約1/4)と多くを占めました。女性は、若年層を中心とした極端なダイエット、妊娠・出産、閉経などを経て骨密度が減る場合があり、さらには男性よりも筋肉量が少ない傾向にあるために下肢の骨・関節に負担がかかりやすく、関節疾患や転倒・骨折を起こしやすくなっていると考えられます。
以上まとめますと、要介護状態となる原因は様々ではあるものの、特に気をつけるべき疾患は、男性では、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、女性では関節疾患と骨折・転倒、そして男女共通して認知症であることが明らかになりました。
軽度の要介護者には骨関節疾患、重度の要介護者には認知症、脳血管疾患、悪性新生物の割合が多い
次に、介護度を要支援1~要介護1の軽度群と要介護2~5の重度群の2群に分け、原因疾患の内訳を比較してみました。

表2に示すように、軽度群では重度群に比し、関節疾患と脊柱管狭窄症・腰椎症・頸椎症が占める割合が大きいこと、逆に、重度群では軽度群よりも、認知症、脳血管疾患、悪性新生物、呼吸器疾患の占める割合が多いことがわかりました。すなわち、認知症、脳卒中、がんなどに罹った場合は要介護2以上の要介護状態に陥りやすくなることが明らかとなりました。この傾向は、札幌市南区で行われた先行研究(髙橋ら.日本公衛誌2017)の結果と同様でした。要介護2とは日常生活の歩行、身体を洗う、金銭管理、簡単な調理が難しくなり、要介護3では寝返り、トイレ、衣服の着脱などが難しいレベルとされています。重度の要介護状態にならないためにも、生活習慣病の予防は大切です。
また、骨関節疾患では軽度の要介護状態につながりやすい傾向がみられましたが、初めは軽度であってもその後に転倒・骨折して重度の要介護になるケースも見受けられますので、関節疾患の予防と転倒・骨折の防止は、介護認定を受ける前だけでなく認定を受けた後でもしっかりと取り組む必要があります。
以上のことから、要介護にならないためには、特に以下の4つのポイントに気をつけることが重要です。
がんの予防、早期発見・早期治療
禁煙とがん検診(胃、肺、大腸、乳、子宮)の定期的な受診を続けましょう。
脳血管疾患などの生活習慣病の予防、重症化予防
食事、運動、禁煙、節酒などの生活習慣の改善を続けるとともに、特定健診等を受診し、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの危険因子の評価と保健指導や適切な治療を受けましょう。
健康保険の種類等 | 受診券について | 健診内容について |
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八尾市国民健康保険 | 健康保険課 国民健康保険係 電話:072-924-3865 |
保健センター 電話:072-993-8600 |
後期高齢者医療保険 | 健康保険課 高齢者医療係 電話:072-924-3997 |
大阪府後期高齢者医療広域連合 電話:06-4790-2031(給付課) |
生活保護受給者 | 生活福祉課 電話:072-924-3836 |
保健センター 電話:072-993-8600 |
職場などの医療保険 | ※加入している医療保険にお問合せください | ※加入している医療保険にお問合せください |
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認知症の予防
認知症の原因については未だ不明な点も多いですが、WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、認知症予防の要点として、生活習慣病の予防(高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常の管理)と運動、禁煙、バランスの良い食事、過度な飲酒の抑制、認知機能トレーニングが推奨されています。
本市のデータ分析でも、
(1)生活習慣病の予防や禁煙によって認知症全体の約1/3が予防可能と推計されました。
(2)食物繊維、ビタミンB群とE群を多く含む野菜類、きのこ類、いも類、豆類や魚介類、肉類、乳類など多様な食品を組み合わせて食べている人では、認知症の発症リスクが低いことが示されています。
関節疾患の予防・管理と転倒・骨折の防止
仕事、運動、生活動作などで肩、腰、膝、股関節などの関節を痛めないよう気をつけるとともに、関節が痛む場合は整形外科などで精密検査や必要な治療と理学療法を受けましょう。日常での運動やストレッチなどで筋力や柔軟性を保つことも大切です。
本市では、これらの課題に対応するために、がん検診、特定健診、特定保健指導、電話指導、禁煙塾、糖尿病教室、健康相談、介護予防教室、認知症予防教室など様々な機会を設けていますので、是非活用してください。
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検診・予防接種
八尾市で行われている健康づくりはこちらのホームページよりご確認ください。
- 参考文献
髙橋恭子、築島恵理.介護保険新規認定者において要介護度が重度となる原因疾患の検討.日本公衛誌2017;64(11):655-663. - 学術発表
北村明彦、北川瞳、花岡純、道本久臣、羽山実奈、髙山佳洋.フレイル・ロコモに対する公衆衛生的アプローチ.第82回日本公衆衛生学会総会(つくば).シンポジウム.R5.11.1. - 研究助成
北村明彦、北川瞳、花岡純、羽山実奈、村木功、髙山佳洋.八尾市における要介護原因疾患の解明と効果的な健康寿命延伸方策の構築.公益財団法人大同生命厚生事業団 2023年度地域保健福祉研究助成.
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