[2021年3月5日]
ID:17612
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前回は安中新田会所跡旧植田家住宅に残る「住」の道具、油単(ゆたん)などを紹介しましたが、今回は「衣」の道具です。
写真左下のひしゃくのようなものは、何に使う道具に見えるでしょうか。これは火熨斗(ひのし)と呼ばれる布のしわをのばす道具、すなわちアイロンです。金属製の器の部分に炭を入れて加熱し、底の平らな部分を布にあてて使いました。
火熨斗の歴史は古く、中国では紀元前から使われていました。日本では柏原市の高井田山古墳(5世紀末)の副葬品として青銅製熨斗が出土しており、このころには日本に伝わっていたことが分かります。そして近代までほとんど形を変えることなく長らく使われていました。
江戸時代に西洋から伝わった炭火アイロンは、明治になって広く普及しました(写真右下)。現在のアイロンに近い形で上蓋を開いて中に炭を入れて使います。取っ手の前に煙突が付いていて空気や熱気を調整することができ、後ろの側面にも空気の調整窓が付いています。
19世紀後半に西洋で開発された現在のような電気のアイロン(写真左上)が、日本に初めて輸入されたのは大正3年で、翌年には国産品が発売されています。発売当時は高価で一般家庭には手が届かない高級品でしたが、昭和になってから広く普及し、炭火アイロンに取って代わりました。昭和30年ごろにはスチーム式のものが登場し、今では主流となっているコードレスアイロンは、昭和63年に国内で初めて発売されています。
旧植田家住宅には、そのほかにガスを使って加熱する業務用のもの(写真右上)や、炭火などで直接温めて使う鏝式(こてしき)のものなども残されていて、アイロンの変遷をたどることができます。
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